気管支喘息は呼吸困難、咳などが発作的に出る気道の慢性的な炎症のことですが、原因を聞かれて答えられる人はそう多くないでしょう。病気のメカニズムはいまだに解明されていないので予防は難しいものの、気管支喘息を引き起こす物質や、気管支喘息になりやすい条件はある程度判明しています。そこで今回は、気管支喘息の原因や誘因をご紹介します。
基礎疾患などはあまり関係がなく、アレルギー体質だと気管支喘息を発症しやすいです。ただし、アレルギー体質の方が必ずしも喘息になるわけでもありません。また、そもそも気管支喘息は気道の炎症であり、炎症は原因物質を吸引した際に好酸球やIgE抗原が体内で生産されることにより発生します。ここで、アトピーのある方はこの好酸球やIgE抗原を作りやすい体質なので、喘息になりやすいといえます。
また、花粉症の方が喘息になりやすいということはありません。しかし喘息の方で花粉症もある方は、花粉症が悪くなると喘息が悪くなることがあります。ただし、喘息が起きやすい気管支直径は2~5μmであり、花粉の粒子は5μm以上あるので気管支まで入ることはできません。これは後述する気管支の過敏性によるものだと考えられます。
もっとも多い原因は、一般的にはダニ、真菌(カビ)など、家のホコリの主成分になっているものです。これらを吸入することで、体が異常な免疫反応を起こし、気管支が過敏に反応してしまうのが気管支喘息のメカニズムです。
ほかの原因として、最近増えているものはイヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ウサギなど、室内で飼われているペットの毛に付着するフケ(タンパク質)です。そのほか桃やシイタケなど特定の花粉、塗装工場で使われるイソシアネートにより喘息が生じます。アメリカでは住環境の悪い地域でゴキブリが喘息の原因になることがあります。
また、特殊な喘息としてはアスピリン喘息があり、これは非ステロイド性抗炎症薬と食品の着色剤、コハク酸エステル化合物の添加物などが原因となります。
しかし、最近の高齢者の喘息では原因となる物質が不明の場合が多くなっています。
ちなみに、かぜ、過労、ストレスは気管支喘息の直接的な原因ではなく、増悪因子、つまり喘息を誘発するものです。ほかには線香の煙、パーマをかける際に使う薬剤などの揮発性の有機溶媒が、もともとある喘息を刺激することがあります。硫黄が強い温泉で硫黄臭を嗅いだときや、PM2.5などの環境汚染物質も喘息が悪化させるので、地域によっては意識する必要があるでしょう。また非常にまれな例ではありますが、ストレスが喘息を誘発することも報告されています。
これまで紹介したような原因により、気管支の過敏性が獲得されてしまうと、どんな誘因でも発作が起きるようになってしまいます。原因を抑えて過敏性がなくなれば発作は起きなくなるのですが、原因となる物質が不明なケースが多いので、結局、原因は気道の過敏性であるともいえるでしょう。
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