COPD(chronic obstructive pulmonary disease)とは慢性閉塞性肺疾患のことであり、これまで肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれてきた病気の総称です。
主な症状は咳、痰、息切れなどで、数年かけて徐々に進行し重症化すると発作性呼吸困難など喘息のような症状が現れることもあります。
また、何らかの原因で急性増悪(急に病状が悪化すること)が起こると、重度の場合は生命の危機もある急性呼吸不全の状態に陥ることがあります。ここでは、COPDの急性増悪の概要、原因、治療法、予防法などを詳しく解説します。
COPDの急性増悪とは、咳や痰の増加、息切れなどの症状が急激に悪化することを指し、個人差はありますが重症のCOPDの場合は急性増悪が繰り返し起こることもあります。急性増悪に陥ると痰の色は透明から黄色や緑色に変化し、安静にしていても息切れするほか、発熱、全身の痛みといった症状を伴うこともあります。
また、COPDの急性増悪が起こると入院が必要となることもあり、場合によっては急性呼吸不全に陥り生命に関わることもあるなど、患者の予後や生活の質にも大きな影響を及ぼします。
COPDの急性増悪の原因は感染症や大気汚染などとされており、ABCアプローチと呼ばれる治療法が基本です。詳細は以下のとおりです。
急性増悪の約3割は原因不明、4~6割はウイルスや細菌などによる呼吸器感染症(肺炎など)とされています。原因となるウイルスにはインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルスなどが挙げられます。
また、大気汚染も原因の1つと考えられており、二酸化硫黄、オゾン、二酸化窒素、ディーゼル粒子、PM10などの関連が示唆されています。そのほか、心不全、気胸(胸に空気がたまる)、肺塞栓(肺の動脈が血栓でふさがれる)といった病気も関係することがあります。
COPDの急性増悪の治療はABCアプローチが基本です。ABCアプローチとは、Antibiotics(抗菌薬)、Bronchodilators(気管支拡張薬)、Corticosteroid(ステロイド)の頭文字をとったもので、原因や症状に応じて治療法が選択されます。
急性増悪が起こった場合、最初に行われるのが気管支拡張薬による治療です。これは気管支を広げて呼吸をしやすくする薬で、効果が6~8時間程度持続する短時間作用性の薬を使います。
さらに、呼吸機能の改善や回復時間の短縮、再増悪の予防のために10~14日間にわたって経口ステロイド薬の投与を行います。また、呼吸困難、痰の増加や濃度がある痰のうち2つ以上の症状が認められる場合は抗菌薬が使用されることもあります。
急性増悪が起こるとCOPDの重症化につながることがあるため、日頃から予防に努めることが重要です。予防においては、まず急性増悪の原因となる感染症予防を心がけます。手洗いうがいなど日頃から取り組めることに加えて、インフルエンザや肺炎球菌ワクチン接種も推奨されています。
また、重症化予防のためには運動も大切です。特に下肢の全身持久力トレーニングが推奨されており、ウォーキングや自転車、踏み台昇降、水中歩行などを行うとよいとされています。そのほか、COPDに対して処方される高容量吸入ステロイドも、COPDの急性憎悪予防に有益であるというデータが存在しています。
COPD患者においては、安静時に息切れがある、痰の色が変わる、発熱など急性増悪の前兆となる症状が現れた場合は、早めにかかりつけ医に相談するとよいでしょう。
また、急性増悪は命に関わることもあります。そのため、万が一急性増悪が起こったときのために、どのように行動すればよいか事前に医師に相談しておくとより安心できるでしょう。