便秘とは、“本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態”のことを指します。一方、便秘症とは“上記の便秘状態により、医療が必要となるほどの症状が出現した状態”です。日本では国民の約30%が便秘症にかかっていると考えられており 、若年層では女性に多く、高齢になると発症率の男女差は小さくなるといわれています。
本記事では便秘症の症状から改善方法などについて詳しく解説します。
便秘症では主に以下のような症状が現れます。
など
なお、初めて便秘症で診断する患者の約7割がこのような症状(排便困難症状)を訴えて受診する一方、毎日排便していることもあるため、診断の際には排便回数のみに頼らないで診断することが大切です。
便秘症は主に器質性・機能性に分けられ、それぞれ原因が異なります。
器質性便秘症とは大腸に生じた病気による便秘症を指し、機能性便秘とは大腸の病気に関係ない便秘症を指します。これらの分類は症状や病態からさらに細分化されます。(以下図を参照)
便秘症では、まず大腸がんなどの器質性・狭窄性の病気でないかどうかを検査した後、症状に応じて排便回数減少型なのか、排便困難型なのかを分類します。また、複数の病態を併せ持つ方もいることを留意して診断を行うことが大切です。排便回数減少型と排便困難型のそれぞれの定義は、以下のとおりです。
排便回数や排便量そのものが少ないタイプの便秘症をいいます。排便回数を厳密に定義する必要がある場合、週3回未満となると排便回数減少型が疑われますが、この基準を満たさない場合でも排便回数や排便量が少ないために便秘症状がある場合には、排便回数減少型と判断されることがあります。
排便回数や排便量は十分あるにもかかわらず、快適な排便ができないため、排便困難や残便感を感じるタイプの便秘症をいいます。
便秘症は問診・身体診察や検査などによって診断が行われます。ただし、診断が確定してから治療を行うのではなく、症状や治療の効果を確認しながら診断していくことが一般的です。
検査方法は問診や身体診察で得た情報によっても異なり、一例としては大腸内視鏡検査や大腸通過時間検査などが行われます。
便秘症の治療方法は便秘の分類・原因によって異なります。病気などが原因となっている場合、まずは原因となる病気の治療が行われます。病気が原因ではない場合は、基本的に便秘症治療薬を用いて治療が行われます。薬剤は主に酸化マグネシウムが処方されますが、下剤にもさまざまな種類があり、患者の重症度や年齢、病気、効果や副作用などを見て検討します。酸化マグネシウムで効果が見られなかった場合は、ほかの薬剤が検討されます。
さらに、薬物治療で改善が見られない場合には、便秘症の分類に応じた手術療法が検討されることもあります。そのほか、規則正しい排便を目指すため、食事・排便習慣指導を行うことも大切です(以下解説)。
規則正しい排便を目指すためには、食事・睡眠などのバランスが取れた健康的な生活を送る必要があります。
以下では、日常生活の中でできる便秘の改善方法について説明します。
便秘を改善するためには、1日3回の食事を規則正しく取ることが大切です。食事の回数や量が少ないと腸の運動が鈍くなるほか、便として排出できるものが少なく便秘になりやすいと考えられます。
また、食事内容は栄養バランスを考慮することが大切です。“便秘には食物繊維を取ることが効果的である”という考えがよく知られています。実際、大腸通過時間が正常であるにもかかわらず便秘が生じているケースでは、食物繊維を1日18~20g摂取することで症状が改善すると考えられています。
一方、大腸通過時間が遅いタイプの便秘症では食物繊維を取ることによって便秘の症状が悪化することもあるため、詳しくは担当医に相談しましょう。
便意を感じたときは、我慢せず排便する習慣を身に付けましょう。
また、加齢などが原因で便秘症にかかっている場合、直腸の知覚が低下して便意を感じにくい方もいます。このようなケースでは、便意を感じなくても朝食・夕食の30分後に1日2回程度トイレで排便動作をすることを指導する場合もあります。
便秘症は生活習慣を見直すことによって、改善が期待できるケースもあります。しかし、何らかの病気が原因となって便秘が生じているケースでは根本的な治療が必要です。そのため、便秘の症状が続く場合には消化器内科などの受診を検討しましょう。