関節リウマチは、起床時の関節のこわばりがもっとも初期に見られる症状です。しかしながら関節のこわばりは、関節リウマチ以外でも起こり得ます。また関節の腫脹や痛みがあるからといって関節リウマチとは限りません。よって早期診断・治療ができるように、2010年からは、新たな診断方法が用いられています。ここでは、関節リウマチの検査や診断方法について、国立病院機構 横浜医療センター 膠原病・リウマチ内科 部長の井畑 淳先生に詳細を解説していただきます。
関節リウマチのもっとも初期の症状は、“起床時の関節のこわばり”です。起床後、1時間以上にわたってこわばりが続く症状が6週間続く場合は、関節リウマチを発症している可能性が高いといえます。しかしながら、起床時の関節のこわばりは健康な方でも起こりえます。
従来では、以下の症状や検査結果のうち4つ以上当てはまる場合、関節リウマチを発症していると診断されてきました。
ただしこの診断方法は早期の診断には向かないとして、2010年からは欧米を中心に、以下のような診断方法に変わっています。
この基準は、関節リウマチの治療の中心となる“メトトレキサート”を早期に投与するための基準として用いられています。
データや症状だけをみると、リウマチとよく似た病気はいくつもあります。しかしリウマチの治療薬は長期間使用する上に副作用がしばしば出現するため、誤って関節リウマチ以外の病気の方にリウマチ治療薬を処方しないよう、判断基準を使用するだけでなく治療前に他の病気を除外することが必要とされています。
関節リウマチの方、特に初期の方で約10~20%の方は、この基準を満たさないことがあります。そのため、診察所見・血液検査・X線検査に加え、MRIや超音波などの画像検査を組み合わせて総合的にリウマチを発症しているかどうか診断されます。
関節リウマチは、関節が腫脹したり圧痛を感じたりするようになるのが特徴です。また、体の左右対称の関節に症状が出ることが多いため、医師は診察の際にそのような症状が表れていないか丁寧にチェックを行います。
ただし、診察だけでは顕著な症状が認められない場合も珍しくありません。そのため、X線や超音波診断装置・MRIなどの画像診断を用いることもよく行われます。症状より前に画像に変化が出ることもあるので、画像に関節リウマチに特有のしるしがあるかどうかチェックし、早期に診断するためです。
MRIで骨髄浮腫やびらん、超音波で滑膜炎がみられた場合、関節の腫脹や痛みが顕著に認められなくても、関節リウマチを発症しているという診断を下す根拠となります。
関節リウマチは、関節の腫脹や痛みが認められる状態を診察で確認したり、画像診断で特徴的な様子があるかどうか見つけたりすることが診断の決め手になることは多々あります。しかしながら、それ以外にも有用な検査があり、その1つが血液検査です。
一般的に血液検査では、リウマチ因子と抗CCP抗体、CRP*や赤沈などの炎症反応、軟骨破壊に関係している酵素であるMMP-3などを重点的にチェックします。
*CRPとは炎症の強さを表す項目です。関節リウマチを発症している場合は、検査結果の値が上昇しますが、感染症などでも上昇するため、この項目だけで関節リウマチと診断されることはありません。
リウマチ因子は、関節リウマチで陽性になる項目として、昔から知られています。ただし近年では、抗CCP抗体の有用性がより注目されています。それは抗CCP抗体はリウマチ因子に比べて、より関節リウマチに特化した検査であるという特徴があるからです。
さらに抗CCP抗体・リウマチ因子・CRPが非常に高い例では、関節破壊が急速になる傾向があることが知られています。そのためこれらのデータは関節リウマチの治療を行ううえでも非常に重視されています。
関節リウマチは、左右対称の関節に腫脹や炎症を起こす特徴がありますが、早期にはそうでないこともあります。
また、関節リウマチの患者さんのうち10~20%は、血液検査を行ってもリウマチ因子や抗CCP抗体が陰性であることが分かっています。つまりこれらの項目は、関節リウマチの診断を下すのに重要な参考所見となる項目ですが、陽性であれば必ず関節リウマチということにはなりません。よって関節リウマチでは診察・画像診断・血液検査の結果を医師が総合的に判断して診断が下されます。