甲状腺機能低下症は女性に多い病気で「目の上(まぶた)や顔が腫れてしまう、嗄声(させい:声がかすれる)がある、声が低くなる、皮膚ががさがさする」という特徴を持つ病気ですが、まったくこれらの症状を引き起こさないケースもあります。
実は、甲状腺機能低下症は症状から判断するのは難しいと言われています。甲状腺機能低下症の症状について、昭和大学藤が丘病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 助教の杉澤千穂先生にお話をお聞きしました。
甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化させるホルモンです。このホルモンが少なくなると、それに伴いさまざまな症状が起きます。
基本的には症状に個人差があるため、なかなか症状だけでは甲状腺機能低下症とは言いきれませんが、以下に代表的な症状について説明していきます。
甲状腺機能低下症におけるむくみは「粘液水腫」と呼ばれます。心不全などによるむくみは水がたくさんたまっている状態になり、患部を圧迫することでへこませても元に戻りませんが、甲状腺機能低下症におけるむくみは圧迫してもへこまないのが特徴です。これらのむくみは足や目の上(まぶた)にも起きます。
活気がなくなります。活動的でなくなり、何ごとに対する意欲や気力もなくなってしまいます。うつ病と間違えられることもあります。
忘れっぽくなり、認知機能が低下します。特に、記銘力(新しくものごとを覚える力)が低下するのが特徴です。
皮膚がカサカサになります。ひどくなると肌から粉をふきます。
代謝が悪くなっているため、食欲がなくなるにも関わらず体重が増加します。
甲状腺ホルモンは心臓の脈を速くし、動きを活発にする作用があります。甲状腺ホルモンが不足すると脈はゆっくりとなり、弱くなってしまいます。
女性では月経の周期や経血の量にも影響が出ることがありますが、この症状は患者さんが訴えづらいところでもあります。
甲状腺機能低下症には初期症状と言われるものはほとんどありません。あえて特徴的な症状を言えば「目の上(まぶた)や顔が腫れてしまう、嗄声(させい:声がかすれる)がある、声が低くなる、皮膚ががさがさする」という訴えがあると、甲状腺機能低下症の可能性を考えます。
また、活気がなくなるのは甲状腺機能低下症の特徴ですが、少し身体がだるくなったり疲れたりするというのは風邪などの病気でもよくあることであり、必ずしも甲状腺機能低下症とはいえませんし、そのような訴えで受診されて甲状腺機能低下症と診断されることもなかなかありません。