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脂質異常症を改善する食事療法

脂質異常症の改善には、まず食生活を中心とした生活習慣の見直しが大切です。コレステロールが多い食品を避けることも大切ですが、コレステロールを下げるためにむしろ多く摂ったほうが良いものもあります。脂質異常症の食事療法で迷ってしまいがちなポイントを交えて、山王病院内科部長の岸本美也子先生にお話をうかがいました。

●コレステロールと飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身・内臓・皮、乳製品、卵黄、トランス脂肪酸を含む菓子類、加工食品を控える。

●食物繊維と植物ステロールを含む未精製穀類、大豆製品、海藻、野菜類を多めに摂る。

●糖質を多く含む菓子類、飲料、穀類の摂取を減らし、アルコールを控える。

●n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚類を多めに摂る。

最近、ローカーボダイエットと呼ばれる低炭水化物食や糖質制限の話題が多く取り上げられています。これらは糖尿病や肥満の方にとって短期的には一定の効果はあるものの、脂質異常症を治療する本来の目的、すなわち動脈硬化性疾患の予防を考慮した場合には必ずしもおすすめできるものではありません。

糖は脳の活動に必要なエネルギーですので、不足すると物忘れをしたり、気力がなくなったり、あるいは抑うつ状態になることもあります。また、全身が疲れやすくなるため、結果として長続きしません。

さらに、炭水化物や糖質を制限するとお腹が空くため、他のものでカロリーを補おうとします。そうすると主食より副菜が中心になり、タンパク質と脂質の摂取が相対的に増えます。糖を減らして体重は落ちるかもしれませんが、そのかわりに血液中の脂質が上がったり、タンパク質の摂りすぎで腎臓に負担がかかることがあります。明らかに食べすぎている分を減らしていくことには問題はありませんが、一般的な食事をされている方が炭水化物や糖質を極端に制限することはおすすめしていません。

食物繊維はほとんど消化吸収されないためエネルギー源にはなりませんし、むしろコレステロールの吸収を抑える働きがあります。糖質にはパン類・麺類・ご飯・イモなどに含まれるデンプンをはじめ、お菓子などに含まれているショ糖(砂糖)、果実に多く含まれているブドウ糖や果糖などがあり、いずれも肝臓で脂肪酸に作り変えられ、中性脂肪の原料となります。

糖質のなかで特に注意が必要なものは、デンプンなどに比べて体内での分解吸収が早く、中性脂肪に合成されやすい砂糖・果糖・ブドウ糖です。砂糖は1日50g以上摂取すると、中性脂肪の数値が上昇することがわかっています。清涼飲料(スポーツドリンクも含む)や炭酸飲料、ジュース類は500mlのペットボトル1本に砂糖が20~50gも入っていますので、これらを飲む機会が増える夏場は気をつけましょう。

 

カロリーの多い食べ物とコレステロールの多い食べ物

 

逆に中性脂肪を下げるために積極的に食べたいのが、アジ・イワシ・サバ・サンマ・マグロなどの青魚です。これら青魚の脂には、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれる不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。このEPAとDHAには、肝臓での中性脂肪の合成を抑えて、血中の中性脂肪を減らす作用があります。そのうえ、血液を固める働きのある血小板が凝集するのを防ぐため、心筋梗塞や脳梗塞の引き金となる血栓ができるのを予防してくれます。