肺気腫は、肺の中にある肺胞という組織が破壊されることで空気の流れが悪くなり、息切れや咳、たんなどの症状が現れる病気です。慢性気管支炎(気管や気管支が炎症を起こした状態)と併せてCOPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)と呼ばれることもあります。
また、一度壊れた肺胞は元に戻らないため、現時点で根本的な治療法はないとされています。しかし、症状緩和が期待できる治療法はいくつかあるため、それらについて詳しく解説します。
肺気腫は、肺の中にある肺胞という組織が壊れることで起きる病気です。肺胞とは、肺の中の気管支が枝分かれした部分(細気管支)の先に存在するぶどうの房のような組織で、呼吸で取り込まれた酸素と血液中の二酸化炭素を交換して空気を入れ替える役割をしています。正常な肺では肺胞には弾性力があり息を吐くときにはその弾性力で肺胞が縮み、肺の中の空気を外に出しています。
肺気腫の原因の多くは喫煙といわれており、喫煙を続けることで肺胞の弾力性が低下し、肺胞を構成する成分も分解されてしまいます。肺胞が壊れれば空気を入れ替える力も低下し、息切れや咳などの肺気腫の諸症状につながります。さらに、一度壊れた肺胞を元に戻すことはできないとされています。
前述のとおり、一度壊れた肺胞は元に戻すことができないため、肺気腫の根本的な治療法はありません。しかし、治療によって症状を緩和させたり進行を抑えたりすることは可能とされています。
肺気腫の大原則は禁煙です。喫煙は肺胞の炎症につながり、呼吸機能の悪化を加速させることがあるため、禁煙することで症状の進行を抑えられる可能性があります。また、禁煙はできるだけ早めに始めるとよいとされています。
禁煙以外の肺気腫の治療法としては、薬物療法、包括的リハビリテーション、在宅酸素療法などが挙げられます。
肺気腫の薬物療法では、まず気管支を広げて呼吸をしやすくする吸入気管支拡張薬を使います。吸入気管支拡張薬には吸入抗コリン薬(LAMA)と吸入β2刺激薬(LABA)があり、効果が12時間以上続く長時間作用型気管支拡張剤が使われます。喘息の要因のある方には、吸入ステロイドを併用することがあります。
肺気腫の薬物療法では増悪を防ぐことも重要ですが、症状としての息切れは呼吸器疾患患者の生活の質を低下させ、運動機能を制限し、予後不良につながるため、息切れを改善する治療を実施することが予後改善のために重要となります。そのため、LAMA/LABAの配合剤を使用することもあります。
口すぼめ呼吸の指導などのリハビリテーションが行われることもあります。口すぼめ呼吸は、口をすぼめて呼吸することによって動的肺過膨張(空気が肺に取り込まれて肺が過膨張する)を予防することができるというもので、呼吸が荒くなったときも効率的な空気の取り込みができるようになります。
また、踏み台昇降やウォーキング、自転車などの下半身を中心とした全身持久力トレーニングによって生活の質を向上させる狙いもあります。
症状が悪化している場合は在宅酸素療法が行われることもあります。在宅酸素療法は自宅に酸素供給装置を設置してチューブから酸素を取り入れる方法で、軽量の酸素ボンベを携帯すれば外出時も治療の継続が可能です。また、治療に必要な酸素吸入量、時間などは医師と相談しながら実施します。
肺気腫は肺胞が破壊されることで息切れ、せき、たんなどの症状が現れる病気で、一度壊れた肺胞を元に戻す治療法はないため、症状を緩和しながらうまく付き合っていくことが大事です。
ただし、原因の多くは喫煙だと考えられており、禁煙を行うことで症状が改善することもあります。そのため、早めに禁煙に取り組むとよいでしょう。
また、薬物療法やリハビリなどの選択肢もありますが、これらはあくまで補助的な役割であって、薬物療法をしながら喫煙を続けていればやはり症状が悪化する可能性も考えられます。そのため、まずは禁煙して症状の悪化や進行を遅らせるように心がけましょう。気になる症状や不安がある場合は、呼吸器内科やかかりつけ医に相談するとよいでしょう。