COPDによる合併症のなかでも、睡眠障害は深刻です。睡眠障害の原因となる睡眠時無呼吸症候群がCOPDと併発しているケースは比較的多く、睡眠中に起こる症状であるためなかなか発見されず、適切な治療を受けている方は少ないといわれています。国際医療福祉大学三田病院呼吸器内科部長望月太一先生に解説していただきます。
歩行時の呼吸困難やたんの出る咳などが3ヶ月以上続くほか、下記のような症状がある場合、COPDと診断されます。胸の視診・打診、呼吸音の聴診のほか、呼吸器の機能検査(肺機能スクリーニング)なども行われます。
COPDの臨床学的所見 |
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胸郭の前後径の拡大 肺肝境界の低下 補助呼吸筋の動員 心濁音界の狭小化 口すぼめ呼吸 呼吸音の減弱 胸部の鼓音 呼気延長 ※重症の場合 呼気時の鎖骨上窩、肋間腔の陥没 チアノーゼ 浮腫 フーバーズ兆候(呼気時に肋間部が外側でなく内側に移動する現象) |
COPDと睡眠時無呼吸症候群を併発している場合、睡眠時に血液中に酸素を取り込めなくなるので、COPD単独の場合と比較して生命予後が非常に悪くなります。睡眠時無呼吸を治療せずにいると、睡眠時に低酸素血症が起こり、血管の内皮細胞障害を引き起こすことがわかっています。つまり、血管の老化や動脈硬化が起きやすくなるのです。治療を行うことによって日常生活のQOL(患者さんの生活の質)も高くなるので、COPDの診断をできる限り早く確定し睡眠時無呼吸が合併していないか診断し、適切に治療を進めていくことが重要です。
睡眠時無呼吸の特徴 |
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睡眠中の症状 いびき 頻繁な覚醒 異常呼吸、無呼吸 異常な体動 頻尿 夜尿症 日中の症状 過眠傾向 居眠り 記憶力、集中力の低下 性欲の減退、性格の変化 起床時の頭痛 歩行時などの息切れ |
上記の問診に加え、気流やいびきの検査、筋電図検査、睡眠ポリグラフ検査などを行い睡眠時無呼吸症候群の診断を確定します。
三田病院には外科の先生が多く在籍しているため、他施設に比べて全身麻酔で手術を行う患者さんが多いかもしれません。全身麻酔を行う場合、術前に肺機能検査をしっかり行わなければならないため、肺機能検査で一病率が70パーセント未満の場合は、必ず呼吸器内科を受診して、COPDやACOS、睡眠時無呼吸の検査を行います。ですから、他の病気で入院したのにCOPDが見つかってしまった、というケースも少なくありません。