増加傾向にある非結核性抗酸菌症ですが、その原因については未解明の部分が多いといいます。福岡大学病院呼吸器内科診療教授の藤田昌樹先生に、非結核性抗酸菌症の原因についてお話をうかがいました。
ただし、傾向としては高齢者に多く、特に最近では閉経後の女性に多く発症していることがわかっています。10年や20年かけてゆっくりと進行するため、どうしても高齢の方に限定されますが、原因についてはわかっていない部分が多い疾患です。
非結核性抗酸菌が多いといわれているのは、日本の場合は水回りで、水道や浴室のシャワーヘッドなど、ぬめり気のあるところに生息しているといわれています。先に女性に好発すると述べましたが、現在はご家庭で女性が掃除を担当することが多いため、そのときにぬめりの中にいた菌が蒸気となって吸い込まれているのではないかという説があるほどです。この他にも、庭でガーデニングをする人に多いという統計を出しているグルーブもあります。これは、土を掘り起こしたときに、土の中にいた菌を吸い込むのではないかというものです。
とはいえ、おそらく多くの方が菌を吸い込んでいるはずなのに、発症する人としない人がおり、このことから「かかりやすい個体」があるということがわかります。患者さんには元気な方も多く、決して体力の低下が発症の契機となっているわけでもありません。姉妹発症の報告もあります。診察時に話を聞いていると、「実は妹(あるいは姉)も発症しています」という方がおられます。とはいっても、必ずしも姉妹が一緒に生活をしているわけではないのです。そのため、遺伝的にかかりやすい遺伝子があるとも考えられ、実際に遺伝子の研究をしている施設もありますが、まだ具体的な特定には至っていません。
非結核性抗酸菌症の治療で用いられる薬には数種類のものがありますが、長期にわたって服用しなければならないため、薬剤の耐性化は大きな問題となっています。耐性化することは明らかになっていても、どのようなメカニズムで、何年単位で耐性化するのか、詳細についてはまだわかっていないのです。
例えば、Aという菌があって治療を行い、1か月程度で菌が消えた後に再発をした場合、菌がAダッシュになっている場合と、全く違うBやCという菌に変異している場合があるのです。これまでの統計によると、AがAダッシュになっていることが3~4割程度、BやCになっている割合が5割以上、もしくは6割や7割ともいわれています。
Aの菌が完全にゼロになって再発するのがBやCの菌なので、Aダッシュの場合は、完全にゼロにならずに微量な菌が潜伏し続けながら再度活性化するという形になります。Aダッシュタイプのものは約1~2年で耐性化するといわれています。しかし、BやCのタイプについては、マクロライド系抗生物質に対して最初から耐性を持っている場合もあれば、薬剤投与を途中で止めたときに起こる場合もあるといったように、そのメカニズムは解明されていません。また、菌は環境中にいるといわれていますが、環境中の一体どこにいるのか、まだその存在を特定できていないのが現状です。