心筋梗塞は心臓に酸素と栄養を共有する冠動脈が詰まることで、心筋が壊死してしまう病気です。強い胸の痛みやしめつけ感が代表的な症状であり、年間約4万人の人が心筋梗塞で亡くなっているともいわれています。
心筋梗塞の主な原因は動脈の内壁が狭くなる“動脈硬化”です。それでは、動脈硬化とはどのような状態で、どのようにして心筋梗塞に至るのでしょうか。
心筋梗塞の原因にはさまざまなものがありますが、もっとも代表的な原因は動脈硬化の進行です。動脈硬化とは血管にコレステロールなどが沈着することで血管内壁が狭くなっていくことです。動脈硬化が進むと、動脈硬化による粥腫の破綻から血栓と呼ばれる血の塊ができるようになり、血栓で血管がつまると心筋梗塞に至ります。
心筋梗塞はある日突然発症するイメージが強い病気ですが、狭心症などのほかの虚血性心疾患に引き続いて発症することもあります。そのため、心筋梗塞の原因や関連する病気、リスク因子などを理解したうえで、発症する前に治療を始めることが大切です。
心筋梗塞の主な原因である動脈硬化は、さまざまな生活習慣病によって引き起こされることが分かっています。また、心筋梗塞以外の心疾患の中には心筋梗塞との関連性が高いものがいくつかあります。
高血圧は文字どおり血圧が高い状態のことです。高血圧自体に目立った自覚症状はありませんが、血管に負担がかかり動脈硬化を起こしやすくなります。
脂質異常症は血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が高い状態のことで、以前は高脂血症と呼ばれていた病気です。動脈硬化は血管へのコレステロールの沈着によって進行するため、脂質異常症の人は動脈硬化のリスクが高くなります。
糖尿病は血糖を下げるインスリンの分泌量が減ったり、インスリンがはたらきにくくなったりすることで血糖が高い状態が続く病気です。血糖が高い状態やインスリンがはたらきにくい状態は、動脈硬化を進行させることが分かっています。
狭心症とは、冠動脈の内部が動脈硬化によって狭くなっていることで引き起こされる症状で、短時間(15分以内)の胸の痛みや胸のしめつけ感が現れます。狭心症と心筋梗塞は“虚血性心疾患”にまとめられることがあるように、種類が近い病気です。
心筋梗塞を発症する人の約半数には、心筋梗塞の発症前に狭心症の症状が認められているといわれており、この段階で治療を始められるかが、心筋梗塞で亡くなるリスクを減らすための重要なカギとなります。
まれな原因ですが、心筋梗塞は動脈硬化のほかに、僧帽弁狭窄症、大動脈弁狭窄症、感染性心内膜炎、非感染性心内膜炎(衰弱性心内膜炎)、冠攣縮といった心疾患に合併することがあります。
これらの病気が疑われた際には、狭心症や心筋梗塞の徴候がないか調べることがあります。
心筋梗塞のもっとも重要な原因である動脈硬化は、加齢とともに誰しもが進行していくものです。
しかし、その進行のスピードは糖尿病や高血圧といった病気のほかにも、さまざまなリスク因子が積み重なることで速くなることが知られています。心筋梗塞を防ぐためには、動脈硬化の進行を速めないような生活を送ることが大切です。
喫煙は高血圧、脂質異常症と並び、心筋梗塞の3大リスク因子の1つといわれています。たばこに含まれる有害物質は血管内皮に作用し、動脈硬化をもたらすことが知られており、喫煙する人だけではなく副流煙を吸うことでそばにいる人にも悪い影響を及ぼします。
乱れた食生活は糖尿病、脂質異常症、高血圧といったさまざまな病気を引き起こします。心筋梗塞を予防するためには、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどのバランスのよい食習慣を心がけることが大切です。食生活の欧米化に伴い、以前の日本人に多かった高血圧や脳出血は減りましたが心筋梗塞は増えており、若年者の心筋梗塞も多くなってきています。
肥満の人は血中の脂質が多い傾向があり、高血圧や糖尿病を合併するリスクも高くなります。バランスのよい食事や適度な運動により肥満を解消することで、動脈硬化のリスクを減らすことができます。
心筋梗塞の原因は多岐にわたりますが、もっとも代表的なものは生活習慣の乱れから引き起こされる動脈硬化です。
心筋梗塞は突然発症し死に至ることもある病気なので、日頃から正しい生活習慣を心がけ、心筋梗塞を予防することが大切です。