大動脈弁閉鎖不全症は、私たちの心臓の働きにかかわる重大な病気で、重症化すると命にかかわることもあります。この記事では、大動脈弁閉鎖不全症がどのような病気なのかについて説明します。
大動脈弁閉鎖不全症とは、大動脈弁の閉まりが悪くなったために、左心室から大動脈に押し出された血液が左心室へ逆流してしまう病気です。急性(感染による炎症で急に発症する)の場合と、慢性で徐々に状態が悪くなる場合があります。
初期は無症状です。ごく軽症の場合には、一生を終えるまでに特に問題が起こらない場合もあります。重症化によって症状が進行すると、動悸や階段・坂道昇降の際の息切れが出てきます。さらに進行すると、安静時の息切れ、夜間一過性呼吸困難(夜寝ている時にに急に息切れが出ること)や起座呼吸(横になっただけで息苦しくなり、常に体を起こした姿勢をとらなければならなくなること)が出てきます。これは明らかな心不全症状で、入院して治療することが必要になります。
前項で述べた、起座呼吸となるような心不全症状が出た場合は危険な状態です。これは最も重い心不全症状のひとつで、命に関わることがあるので、すぐに医療機関を受診してください。
ただし、全ての心不全症状が大動脈弁閉鎖不全症からくるというわけではありません。心臓に大きなトラブルがあれば息切れは出ますし、息切れは肺の病気でも、貧血でも出ることがあります。いずれにしても、何が息切れの原因となっているのか、医師の診断を受けることが大切です。
動悸や息切れを訴えて受診される方が多いです。その一方で無症状の(自覚症状がない)場合も多く、健康診断やその他の疾患で医療機関を受診して、聴診でたまたま発見されることもあります。
症状による分類は「NYHA分類」と呼ばれるものが有名です。これは自覚症状がどのようなものかに基づいた分類です。
Ⅰ度:心疾患はあるが身体活動に制限はない。
日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛(締め付けられる胸の痛み)を生じない。
Ⅱ度:軽度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。
日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
Ⅲ度:高度な身体活動の制限がある。安静時には無症状。
日常的な身体活動以下の労作(運動)で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
Ⅳ度:心疾患のためいかなる身体活動も制限される。
安静にしていても、心不全症状や狭心痛がある。わずかな労作(運動)でこれらの症状は増悪(悪化)する。
この分類とは別に、エコー検査などの画像診断による分類があります。血液の逆流量、逆流率や有効逆流弁口面積など、数字で表せる(定量的な)指標で分類されます。
大動脈弁閉鎖不全症は、基本的に遺伝しません。