高血圧とは、血圧(血管内の圧力)が正常な範囲を超えて高い状態を指します。高血圧は主に、原因が特定できない本態性高血圧と、何らかの病気が原因となる二次性高血圧に分類されます。
今回は、福岡山王病院 病院長兼循環器センター長の横井 宏佳先生に、本態性高血圧と二次性高血圧の発生メカニズムについてお話しいただきました。
高血圧とは、血圧(血管内の圧力)が正常な範囲を超えて高い状態を指します。
日本では、日本高血圧学会が定める高血圧治療ガイドライン(その病気の診断方法や治療方法を定めた指針)によって、高血圧と診断する具体的な血圧の値が定められています[注1]。
高血圧の状態がつづくと、動脈硬化(動脈の壁が硬くなることで構造が壊れ、血液の流れが悪くなった状態)につながる可能性があります。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血など、重症化しやすい病気を引き起こすことがあります。
また、高血圧は腎臓の機能の低下につながることが多いでしょう。腎臓の機能が低下してしまうと、腎臓の機能を補うために、透析(人工的に血液の浄化を行うこと)を受けなければいけなくなるケースもあります。
注1:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」
高血圧は主に、原因を特定することができない本態性高血圧と、原因を特定することができる二次性高血圧に分けられます。
このうち、本態性高血圧の患者さんの割合が高いでしょう。
本態性高血圧では、主に遺伝による要因と環境的な要因がかかわり合いながら高血圧を引き起こすケースが多いと考えられています。
遺伝による要因とは、生まれつき血圧が高くなる素因(その病気になりやすい体質)があることを意味します。たとえば、家族のなかに高血圧の治療を受けている方がいる場合には、素因がある可能性があるでしょう。
しかし、素因があるからといって、すべての方が高血圧になるわけではありません。素因に加えて、生活習慣の乱れなどの環境的な要因があると、高血圧につながりやすくなると考えられています。
高血圧を引き起こす主な要因は、生活習慣の乱れといってよいでしょう。なかでも、塩分の過剰摂取が要因となる可能性が高いと考えられています。塩分をとり過ぎてしまうと、血液中の塩分(ナトリウム)をうすめるために水分を引き込み、血圧を上げてしまいます。さらに、ナトリウムを排出しようとするために腎臓に負担がかかってしまうことも、高血圧につながってしまうといわれています。
ほかにも、運動不足やアルコールの過剰摂取、肥満なども高血圧を引き起こす要因になると考えられています。
高血圧を引き起こす原因が特定できる二次性高血圧では、何らかの病気が高血圧を引き起こしているケースが多いでしょう。ここでは、高血圧の原因となるいくつかの病気について解説します。
二次性高血圧の原因となる病気の一つに、腎動脈狭窄症があります。腎動脈狭窄症とは、腎臓に血液を送る腎動脈が狭くなってしまう病気です。
腎動脈が狭くなることによって腎臓に流れる血液が少なくなると、腎臓においてレニンと呼ばれるホルモンの分泌が促進されます。これは、血圧上昇を促す物質であるアンジオテンシンⅡの増加につながり、高血圧の状態になってしまうのです。
また、二次性高血圧のなかでも頻度の高い病気に、睡眠時無呼吸症候群があります。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に断続的に呼吸が止まってしまう病気です。
通常、睡眠中は深い睡眠と浅い睡眠を繰り返します。深い睡眠のときに交感神経(主に体を活動させるときに機能する神経)の緊張が大きくゆるみ、血圧が下がります。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の方は、たびたび呼吸が停止するために深い睡眠に入ることができないケースが少なくありません。結果的に交感神経が緊張をし続けることになり、睡眠中も血圧が低下しないことが高血圧につながるといわれています。
原発性アルドステロン症とは、腎臓の上の副腎と呼ばれるホルモンを分泌する臓器が腫れ、アルドステロンホルモンが過剰に分泌される病気です。
原発性アルドステロン症の患者さんは、アルドステロンホルモンが過剰に分泌されることによって、血圧が高くなるといわれています。
本態性高血圧であっても二次性高血圧であっても、高血圧の発生には、交感神経の緊張が関係するケースがあります。これらのケースでは、交感神経の緊張が続いた結果、高血圧が引き起こされたと考えられます。
ここでは、交感神経の緊張が高血圧の発生につながるいくつかの例をお話しします。
本来、人の体には自動調整する機能が備わっています。たとえば、塩分の過剰摂取を行うと、血圧が高くなりすぎないよう脳から腎臓へ信号が送られることになります。
このときに過剰な信号が送られると交感神経の緊張につながり、高血圧の状態になってしまうことがあるのです。
通常、睡眠時は交感神経の緊張がゆるむために血圧は下がるといわれています。
しかし、お話ししたような睡眠時無呼吸症候群の患者さんを含め、睡眠中であっても血圧が下がらない方がいます。
これらの方は、十分な睡眠がとれていないなどの理由により、睡眠中も交感神経が緊張し続けていると考えられます。