日本人の40歳以上の2人に1人が高血圧であると言われています。まさに、日本の「国民病」とも言える高血圧ですが、そもそも血圧とはどういうものなのでしょうか?そして、その血圧が高いことがどういう意味を持っているのでしょうか? 日本赤十字医療センターの上條由佳先生に伺いました。
血圧とは、「血管の中を流れる血液が、血管の壁に与える圧力」のことです。
心臓は、ポンプのような働きをすることで血液を全身に送り出しています。心臓から送り出された血液は、動脈を通って全身に行き渡り酸素や栄養分を届けます。その後、静脈を通って全身から老廃物などを回収して、心臓に戻ってきます。
血圧は、二つの要素で決まると言われています。「心臓から送り出される血液の量(心拍出量:しんはくしゅつりょう といいます)」と「血管の抵抗」の二つです。
当然、心臓から送り出される血液の量が大きい(例:塩分・水分過多)と、血圧も高くなります。また、血管の抵抗が大きい(例:動脈硬化・寒さ/ストレスなどによる血管収縮など)と、血圧は高くなります。
血圧は、例えば115/75のように二つの数値が並びます。なぜ血圧には数値が二つあるのでしょうか?
上の数値を収縮期血圧(しゅうしゅくき けつあつ)、下の数値を拡張期血圧(かくちょうき けつあつ)といいます。先に述べたように、心臓はポンプのような働きをしています。つまり、心臓は収縮と拡張を繰り返しています。
心臓が収縮した時、心臓から動脈に血液が送り出されます。この時、血管には大きな圧力がかかり、これを収縮期血圧とよんでいます。(心臓が収縮した時の血圧なので、“収縮期血圧”です。)
一方、心臓が拡張した時、静脈から心臓に血液が戻ってきます。この時、血管にかかる圧力は比較的小さく、これを拡張期血圧とよんでいます。(心臓が拡張した時の血圧なので、“拡張期血圧”です。)
拡張期血圧は心臓が拡張した時の血圧であり血管そのものの伸展性(動脈硬化など)に強く影響します。また、収縮期血圧から拡張期血圧を引いた数値を脈圧といいます。
(厳密には、心臓には左心房・右心房・左心室・右心室の4つの部屋があり、左心房・右心房と左心室・右心室が交互に収縮・拡張を繰り返しているのですが、ここでは上のように理解して頂ければ大丈夫です。)
血圧は常に日内変動しており、怒ったときや睡眠不足のときなどある特定の状況で血圧が上がるのは当然ですが、ベースとして基準値以上である状態が続く場合、高血圧といいます。
血圧の基準として日本では、日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン」が用いられています。家庭血圧がより重要であるとされておりますが、診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、家庭で測定した血圧が135/85mmHg以上である場合、「高血圧」となります。また、年齢や原疾患により目標血圧は異なります。
高血圧の原因・症状・治療などについては以下の記事でご説明しています。ぜひご参照ください。
血圧は、一日中ずっと同じ値をとっているわけではなく、上がったり下がったりを繰り返しています。これを血圧の日内変動(にちないへんどう)といいます。この日内変動のリズムと合併症の起こりやすさに相関があることが分かっています。
血圧の日内変動のリズムにはどのようなものがあるのでしょうか?
まず正常な方では、起きている時に血圧が高く、寝ている時に低くなります。さらに、寝ている時の血圧が起きている時に比べて10~20%程度低くなるのが正常です。これをディッパー(Dipper)型といいます。
このリズムが正常ではないパターンとして以下のようなものがあります。
日内変動のリズムが正常ではない場合、どのような合併症が起こるのでしょうか?
例えば、診察室での血圧が全く正常であったとしても、ノンディッパー型、ライザー型では、心臓への負担が増え、また脳卒中や心筋梗塞などで死亡するリスクが増加します。また、エクストリームディッパー型でも、脳卒中を発症するリスクが増加します。さらに、若い方で血圧日内変動が異常であった場合は、将来心臓の血管(冠動脈 かんどうみゃく といいます)に動脈硬化が起こるリスクが4倍以上も増加します。そして、心臓の血管の動脈硬化は狭心症や心筋梗塞につながります。
先に述べましたが、脈圧とは、収縮期血圧から拡張期血圧を引いた数値です。例えば、収縮機血圧130mmHg、拡張期血圧80mmHgの方の場合、脈圧は130-80=50mmHgとなります。
脈圧の正常値は30~50mmHgとされていますが、脈圧の大小は何を意味しているのでしょうか?
実は動脈硬化が進むと、脈圧が大きくなるのです。つまり、脈圧が大きい方は動脈硬化が進んでいるということです。そして、動脈硬化は脳梗塞や脳出血などの脳卒中、心筋梗塞などの原因となります。