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腹膜透析の合併症にはどんなものがある?-塩分と感染に注意

自宅で行える透析治療である腹膜透析。腹膜透析では、どのような合併症が起こりうるのでしょうか?
腹膜透析の合併症について以下に詳しくご説明します。

腹膜透析は、自分の「腹膜」(ふくまく:お腹の中の内臓を覆っている薄い膜)を使って、体内の不要な老廃物や余分な水分を排出し、血液をきれいにする治療法です。自宅で行える透析治療で、通院は月に1〜2回程度で済みます。
参考記事:腹膜透析とは?―自宅でできる透析治療

透析治療には、血液透析・腹膜透析の2種類があります。そして、腹膜透析の合併症には、腹膜透析に特有の合併症・透析治療に共通した合併症の2種類があります。それぞれについて以下に詳しく見ていきましょう。

腹膜透析に特有の合併症として以下のようなものが挙げられます。

(1)感染症
細菌がお腹の中に入りこむことによって、腹膜(ふくまく:お腹の中の内臓を覆っている薄い膜)が炎症を起こした状態です。排液が濁った場合は、病院の指示に従いましょう。その他に、熱が出る、お腹が痛くなる、透析で除去できる水分の量がへる、などの症状が出ることもあります。

感染経路には、①出口部の感染、②バッグ交換の際の接合部の感染、③内因性の感染(体の外からではなく、大腸や虫垂などから細菌が入り込むこと)があり、ほとんどが①②となります。感染を防ぐためには、チューブの出口部を清潔に保つことが大切です。これは、歯磨きなどと同じように日常の一部として慣れていくことが重要で、目が不自由な場合などご自身でやるのが難しい場合はご家族や訪問看護師にやってもらうことも可能です。

(2)注排液不良
腸間膜(ちょうかんまく)や大網(だいもう)、卵管采(らんかんさい)など(注:いずれもお腹の中にあるものです)がチューブに巻き込まれた時などに、注排液不良が起こることがあります。

(3)硬化性腹膜硬化症(こうかせいふくまくこうかしょう:EPSともいいます。)
腹膜が長時間傷むことにより、硬く分厚くなったり(線維性肥厚:せんいせいひこう)、血管が新しく作られたり(血管新生:けっかんしんせい)するもので、腸閉塞(ちょうへいそく:腸が詰まった状態。イレウスともいいます。)を引き起こす重篤な合併症です。

現在ではそのメカニズムが分かってきており、国内ではどこでも安全な透析液を使用していること、透析技術が進歩してきていることによりその発症は稀になってきています。適切な治療を行うこと、定期的に検査を受け腹膜の傷み具合を見ていくことが大切です。

(1)貧血
腎臓では赤血球をつくるホルモンをつくっています。よって、腎不全患者さんでは、このホルモンが不足することや、鉄分などの材料が不足することにより、貧血が起こります。
疲れやすい、息切れ、めまい、動悸などの症状が起こります。材料やホルモンを補充することにより治療が可能です。

(2)骨が弱くなる
体内のカルシウムやリンなどのバランスが壊れることが原因で、骨が弱くなってしまい、骨折しやすくなったり、骨・関節の痛みが生じたりします。

(3)心臓血管系の合併症
透析患者さんの生命予後(あとどのくらい生きることができるか)を左右する一番の問題は心臓血管系の合併症です。動脈硬化や水分過剰、高血圧、貧血、カルシウム・リン等の調整が重要です。

腹膜透析は日常生活への支障が少ない治療法ですが、腹膜透析を長く続けていく為には「体液管理」と「感染予防」をしっかり行うことが大切です。
「感染予防」については上に述べましたので、「体液管理」についてご説明します。

「体液過剰」とは、塩分を摂りすぎることで喉が渇いてしまい、水をたくさん飲んで体内の水分が過剰に増えることです。水分が増えすぎると高血圧になり、心臓に負担がかかってしまいます。塩分管理には十分注意しましょう。

また、体液過剰の状態が腹膜を傷めることが分かっており、適切な体液量を維持することは腹膜透析を長く安全に行うことにつながります。もちろん食塩制限はどの透析方法でも共通するものです。
参考記事:透析治療を受けている人はどのような食事をとればいい?

記事1:血液透析患者さんは海外旅行できる?―その準備、注意点について
記事2:腎臓移植とは(前編)—ドナーとレシピエントの条件、移植の手順について
記事3:血液透析とは?―そのしくみ、合併症、生活上の注意について
記事4:透析治療を受けている人はどのような食事をとればいい?
記事5:腹膜透析とは?―自宅でできる透析治療
記事6:腹膜透析の合併症にはどんなものがある?-塩分と感染に注意
記事7:腎臓移植とは(後編)ー移植後の生活、移植のメリット・デメリット、費用について
記事8:腎臓を守るためには減塩が大切!(前編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事9:腎臓を守るためには減塩が大切!(後編)—慢性腎臓病における減塩の重要性について
記事10:慢性腎臓病(CKD)とは—腎臓が悪くなると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる?