こどもが意識不明となり、眼の前でけいれんをしている様子を見ると「死んでしまうかもしれない」と不安になると思います。しかし、典型的な熱性けいれんであれば、命にかかわることはありません。今回は熱性けいれんの際の対処法と、予防薬についてご紹介します。
こどもが熱性けいれんを起こしたら、まずは両親が落ち着くことが重要です。まずは自身が深呼吸をして、こどもを平らで安全なところに寝かせて衣服を緩め、嘔吐した場合にのどにつまらないよう顔を横に向けましょう。体を押さえつけたり、口に手や物を入れたりするのはかえって悪影響です。
次に、けいれんが始まった時間とけいれんの様子を確認してみてください。左右の手足が同じようにけいれんをしているかどうかがポイントです。5分以内で症状が治まるようであれば、落ち着いて身支度をしてからの受診でかまいません。
もしそれ以上の時間続きそうであったり、けいれんに左右差があったりした場合は注意が必要です。発作がおさまった後の様子がおかしかったり、発作を繰り返したりしている場合も救急車を呼んで緊急に受診してください。
熱性けいれんの発作があったとしても、大抵の場合こどもの頃に1回のみですが、熱が出た際に2回、3回と発作を繰り返す人がいます。繰り返しやすい人の特徴は以下の通りです。
熱が出るたびにけいれんしてしまっては困るという点から、けいれんの予防薬を使うことがあります。同様に、発作の時間が長い傾向にある人に対しても発作を予防することがあります。
以下に予防が適応となる条件を示します。
ただし、予防薬を使用すると体がふらついたり意識がぼうっとしたりするなどの副作用があるため、メリットとデメリットに関して処方を受ける医療機関でよく相談しましょう。
熱性けいれんの予防薬として推奨されているのは「ジアゼパム坐薬」です。
風邪に伴い体温が37.5度程度まで上昇してきたら、処方されているジアゼパム坐薬を肛門に入れます。もし、8時間経過しても熱が下がっていなければ、もう一度同じ量の坐薬を使用しましょう。計2回使えばお薬の効果は1~2日間持続しますので、熱の出始めに多い熱性けいれんの予防にはそれ以上の使用は必要ありません。
熱性けいれんにおける発作は、初めての発作から1~2年の間に繰り返すケースが多くあります。また、熱性けいれん自体が5歳までに起こりやすいということから、予防薬は最後の発作から1~2年もしくは4~5歳まで続けるのが一般的です。
発熱によってけいれんを引き起こす熱性けいれんですが、いくら解熱剤をこまめに使用しても発作自体は抑えられません。反対に、解熱剤によって体温が上下することが発作を引き起こすこともありません。通常通り、解熱剤は熱による本人の苦痛を改善するという観点で使ってください。ただし、解熱剤でよく使用される「アセトアミノフェン坐薬」はジアゼパム坐薬と同時に使用すると相性が悪いので、ジアゼパム坐薬を使用してから30分以上間を空けて使用してください。
熱性けいれんの原因はほとんどの場合、風邪による発熱です。風邪予防のために手洗いをして規則正しい生活を送りましょう。この記事では、けいれんが起きてしまったときの対応やけいれん予防の薬剤の使用方法に関してお伝えしましたが、以前にかかったことがある病気や飲んでいるお薬、家族にけいれんを起こした人がいるかなどの情報が分かっていると、万が一、受診が必要になった際により正確な診断につながります。
また、命に関わる髄膜炎は熱性けいれんとよく似た症状で発症します。実際に熱性けいれんと間違われて髄膜炎の治療が遅れたという報告もあります。髄膜炎の原因となる肺炎球菌とインフルエンザ桿菌の感染は、現在では予防接種で防ぐことが可能です。これは定期接種ですから、必ず接種するようにしましょう。
記事1:麻疹(はしか)とはー特徴的な症状と予防接種の重要性
記事2:こどもが起こす「熱性けいれん」とは?
記事3:熱性けいれんの対処法・予防法:慌てずに様子をみる
記事4:「熱性けいれん」の気になるQ&A