毎年流行するインフルエンザ。その予防接種で、流行する4種類(A型2種類、B型2種類)のインフルエンザ型に対する免疫を作ることができます。打つことに科学的な意義のあるワクチンです。
今回は、インフルエンザの予防接種の効果について、国立成育医療研究センター感染防御対策室の宇田和宏先生に詳しくお話を伺いました。
インフルエンザの予防接種の効果については、いくつかの報告がなされています。下記の資料からみると、インフルエンザの予防接種は、インフルエンザの発症を50〜60%予防できるとされています。[注1]
注1:(1)平成28年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD (vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究」
(2)Katayose et al. Vaccine. 2011 Feb 17;29(9):1844-9
(3)Shinjoh et al. PLoS One. 2015;10:e0136539.
年度や報告によるばらつきはありますが、乳幼児や高齢者でインフルエンザの重症化の予防効果は、以下の報告のように70〜80%程度といわれています。[注2]
注2:(1)Katayose et al. Vaccine. 2011 Feb 17;29(9):1844-9
(2)平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」
予防接種をしてから2週間程度で抗体が上昇して免疫がつきます。0〜12歳の場合は、2回接種の後2週間程度で免疫がつきます。
インフルエンザウイルスの潜伏期間は、1〜4日です。そのためインフルエンザにかかった方に接触してから慌てて接種しても間に合わないかもしれません。
流行期に入る前に予防接種をすることが望ましいです。
インフルエンザの予防接種は、一般的に1シーズンは効果があるといわれています。
流行するインフルエンザの型は、毎年微妙に変わります。そのため、毎シーズンごとに打たなければなりません。
インフルエンザワクチンを初めて受ける場合は2回接種が必要です。その後は1回接種でもある程度の効果はありますが、2回接種したほうがより強い免疫が得られます。そのため12歳以下では、2回接種が推奨されています。
免疫を抑える薬を飲まれている患者さんは、抗体が一般的につきにくいとされています。しかし、そのような患者さんこそインフルエンザにかかったときに重症になることがあるので、接種が望ましいです。
13歳以上の方であっても、免疫抑制剤を飲んでいるなどの理由で医師が必要と判断した場合は、2回接種を行う場合があります。
さまざまな研究で効果が認められているにもかかわらず、インフルエンザの予防接種は「効果がない」といわれてしまうことがある理由には、以下が挙げられます。
インフルエンザウイルスには、毎年少しずつウイルスが変化する(抗原変異といいます)性質があります。そのため、毎年その年に流行すると予測された型がワクチン株に選ばれています。
例えばA型は型が外れていてもB型は型が流行するウイルスの株とあたっていて「今年はA型にはいまいちだったけど、B型には効果があったね」ということがありえます。
ワクチン株:ワクチンのもととなるウイルス
麻しん風しんワクチンなどの予防効果が非常に高い他の予防接種と比較すると、インフルエンザワクチンは、かかるのを予防するという点で劣るのは事実です。
しかし、インフルエンザの場合は、例年大流行するため圧倒的にかかる人数が多いので、予防できた患者さんの人数としては他のワクチンよりもはるかに多く、接種する意義は大きいと思います。
100%予防ができるわけではありませんが、予防接種を打つ意義は科学的に認められています。できる限りインフルエンザの予防接種は、自分の年齢に合った回数・量を打つことが大事です。