多発性骨髄腫の完治は、極めて難しいと考えるべきです。これは、基本的には一生付き合っていかなければいけない厳しい病気です。しかし、造血幹細胞移植など強い治療を行うことで10年以上再燃しなかったり、中には20年以上再発せずに生存されている報告もあります。また、新しい薬剤も少しずつ増えています。多発性骨髄腫の生存率と予後(病気のたどる経過)について、国立国際医療研究センター(当時。現・東京女子医科大学)の萩原將太郎先生にお聞きしました。
以前、多発性骨髄腫の治療後の平均生存期間は3~5年と言われていました。しかし、近年は様々な治療が発展したこと(造血幹細胞移植や新規薬剤の効果)によってかなり改善されてきています。特に65歳以下の比較的若い患者さんの生存率は年々向上して、5年生存率は概ね50%くらいまで改善しています。(下図参照)
(多発性骨髄腫の病期は「β2 ミクログロブリン」と「アルブミン」により決定します。「生存期間中央値」は、おおまかに言って「平均余命」のことだと考えてください)
ISS (国際病期分類):
血液検査で測定できる血清β2ミクログロブリン(β2MG)値と血清アルブミン(Alb)値によって分類します。
β2MGは骨髄腫細胞の量が多い場合や活動性が高いときに高くなります。また骨髄腫による腎機能障害が進んだ時にも高くなります。M蛋白が増加して正常蛋白が減少してくるとAlbが低下します。これら2つの数値が骨髄腫の勢いを表します。
骨髄腫の病期分類には、前述の国際病期分類(ISS)とDurie-Salmon分類(DS分類)があります。
Durie-Salmon分類は、予後を予測できるもではありませんが、腫瘍の量を反映していると言われており、ISSと併記されることが一般的です。
また、最近は、骨髄腫細胞の遺伝子異常も加えた改訂国際病期分類(Revised - ISS:R-ISS)も使われるようになりました。
*FISH法とは、遺伝子検査の一つで、染色体の中の遺伝子を蛍光色素で光らせて、遺伝子の異常や欠失などを調べる方法です。特に17番染色体の短腕(17p)の欠失、4番と14番染色体の転座、14番と16番染色体の転座など予後不良な因子は、FISH法で調べることができます。
多発性骨髄腫の予後(病気の経過)を考える上では、どのような人がハイリスクである(状態が悪くなりやすい、あるいは治療が効きにくい)のかについて考えることが重要です。これまで、予後に関するさまざまな研究がなされてきました。最近の国際骨髄腫ワーキンググループの報告では、高齢者、ISS(国際病期分類)Ⅰ<Ⅱ<Ⅲ、骨髄腫細胞の染色体異常のうち17番染色体短腕の欠失(17p-)あるいは4番14番染色体の転座(t(4;14))が認められる場合などが予後不良に関係が深いことが示されました。