日々、悪性リンパ腫の新しい治療薬が開発されています。開発では、全く新しいメカニズムをもった薬がうまれる場合と、他のがんに用いられている薬がホジキンリンパ腫などの血液がんに適応拡大するケースがあります。2016年現在の新薬の開発状況について、がん研有明病院 血液腫瘍科部長 畠清彦先生にご解説いただきました。
現在、肺がんや悪性黒色腫で用いられているニボルマブという薬が、2016年の年末にはホジキンリンパ腫へ適応拡大される予定です。
ブレンツキシマブ ベドチンという薬が2014年からホジキンリンパ腫に使用可能となりました。また、標準治療であるABVD療法(参考記事「悪性リンパ腫の治療-病型によって治療法は異なる」)のなかのB(ブレオマイシン)を抜いた、AVD+ブレンツキシマブ ベドチン療法がABVD療法よりも効果が期待できるとされ、現在、その2つの治療法の比較試験の結果検証を行っています。
リツキシマブの次の世代として、オビヌツズマブ(開発番号:GA101)と呼ばれる抗体医薬品が治験が進められています。リツキシマブはヒトの抗体にマウスの抗体が少し混ざっている医薬品です。人間はマウスの抗体を異物と判断しアレルギーを起こすことがわかっているため、アレルギーなどの副作用が起こる危険性がありました。一方、オビヌツズマブはヒトの抗体からつくられています。オビヌツズマブは、リツキシマブよりもアレルギー反応が少なく、治療効果にばらつきが少ない薬と期待されています。
CHOP療法にリツキシマブとオビヌツズマブどちらを併用したほうが効果が高いかという治験が終わり、2016年現在、結果を検証しているところです。
1970年以降、T細胞性リンパ腫はCHOP療法あるいはHyperCVAD/MA療法から大きく変わっていません。ところが、成人T細胞性リンパ腫白血病に関しては近年進歩がありました。CCR4という抗体が陽性の成人T細胞性リンパ腫白血病の患者さんの4割に、日本が開発したモガムリズマブが効くことがわかり、現在治療薬として用いられています。CHOP療法などと組み合わせるとさらなる効果が期待されており、研究が進んでいます。
ホジキンリンパ腫で使用可能なブレンツキシマブ ベドチンという薬が一部のT細胞性リンパ腫に使用可能となっています。さらに現在、CHOP療法のなかのO(ビンクリスチン)を抜いた、CHP+ブレンツキシマブ ベドチン療法がCHOP療法よりも効果が期待されており、2つの治療法の比較試験が行われています。
海外では、抗体医薬以外でも以下のように開発や治験が進んでいます。
メトトレキサートのメカニズムに似た葉酸拮抗薬です。
アメリカですでに承認されているT細胞性リンパ腫の治療薬です。2016年現在、日本では治験が終わり結果を検証中です。
アメリカですでに治療薬として使用されています。現在日本でも開発が進んでおり、T細胞性リンパ腫に効果があるといわれています。
T細胞性リンパ腫の再発例に効果があるといわれています。
日本では欧米にくらべ治療薬の開発が数剤遅れているものの、悪性リンパ腫においては新しい治療薬の開発が進んでいます。