「リンパ」という言葉を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。またリンパ節やリンパ球など、「リンパ」と名のつくものがいくつかあることにも気付かれるかもしれません。本記事では、リンパとは何かという解説も含め、悪性リンパ腫についてがん研有明病院 血液腫瘍科部長 畠清彦先生にお話しいただきました。
「リンパ管」とは、全身に広がる血管のような管のことを指し、管のところどころに小さな豆のような「リンパ節」があります。リンパ節は胃や肺のような臓器ではありません。リンパ管には「リンパ液」が流れており、血管には入れない大きな分子を運んだり、細菌などの病原菌から身を守る「免疫」をつかさどる「リンパ球」が数多く存在しています。
血管のなかには血液が流れています。血液のなかには酸素を全身に運ぶ「赤血球」・出血をとめる「血小板」・細菌などの病原菌と闘う「白血球」などが含まれています。白血球はさらに、リンパ球・単球・顆粒球にわけられます。リンパ球はウイルスや細菌などの病原体と闘って体内から排除する免疫というはたらきを担っています。
造血細胞がB細胞やT細胞へと分化(複雑なものに進化すること)していく過程で悪性化(=がん化)したものです。がん化した白血球が血液内で増殖した場合「白血病」といい、がん化したリンパ球がリンパ節やリンパ管で増殖した場合、「悪性リンパ腫」といいます。リンパ管と血管は体内でつながっているため、悪性リンパ腫でも白血病のような症状が出る場合があり、またその反対も起こります。
「悪性リンパ腫」と胃がんや大腸がんなどの「リンパ節転移」は同じ病気であると思われがちですが、全く別物です。
胃がんや大腸がんのような固形がん(臓器や組織などのがん)が全身に存在するリンパ節に転移することを、リンパ節転移といいます。一方、血液のなかのリンパ球ががん化したものが悪性リンパ腫です
悪性リンパ腫はリンパ球が分化する過程のどの段階でがん化したかによって、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に大別されます。
・B細胞性リンパ腫
・T細胞性リンパ腫
・NK細胞リンパ腫
非ホジキンリンパ腫のなかで最も多いものが「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」で、約40%を占めます。その次に多いものが濾胞性リンパ腫で15%を占めます。そのほか、MALTリンパ腫・マントル細胞リンパ腫がそれぞれ5%、リンパ形質細胞性リンパ腫・パーキットリンパ腫がそれぞれ2%を占めています。
成人T細胞性白血病リンパ腫は現在、日本・韓国・台湾・中国の一部に発症する悪性リンパ腫です。日本のなかでも沖縄・九州・四国で特に多いことがわかっています。これはヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T-cell leukemia virus type I:“HTLV-1”)が母乳を介してうつり、引き起こしていることがわかっています。母乳を介していることがわかってからは、以前よりも減少傾向にあるものの、発病するまでに30年以上かかるため、患者さんがゼロになるにはまだ時間がかかります。また最近では、東京・大阪で発症する方も見つかっています。しかし、検査や化学療法の進歩により、確実に改善されると期待されています。