悪性リンパ腫とは、血液細胞のがんの1つです。血液細胞のがんには悪性リンパ腫のほかに、白血病、多発性骨髄腫などがあり、なかでも悪性リンパ腫はもっとも患者数の多いがんとして知られています。悪性リンパ腫には100種類以上の病型があります。大きく分けてホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫があり、原因や症状の現れ方、治療法などが異なります。
本記事では悪性リンパ腫の原因や発症リスクを高める要因として現在分かっていることについて解説します。
悪性リンパ腫は、細胞の遺伝子の変異によって起こることが分かっていますが、なぜ遺伝子変異が起こるかについては、まだよく分かっていません。
しかし、悪性リンパ腫の発症リスクを高める要因については、いくつか分かっていることがあります。
以下では、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けて、発症リスクを高める要因をご紹介します。
ホジキンリンパ腫は、日本における悪性リンパ腫のおよそ5%を占めるといわれています。発症リスクを高める要因としては、遺伝的な関与とウイルスへの感染が挙げられます。
血縁者にホジキンリンパ腫の方がいると、自身もかかりやすくなる可能性があるといわれています。しかし、必ず発症するわけではありません。
ヘルペスウイルスの一種であるエプスタイン・バーウイルス(EBV)に感染している方は、感染していない方と比較して発症リスクが4倍以上になるといわれています。EBVは伝染性単核球症を引き起こしたり、咽頭がんの原因になったりすることも知られています。日本では、ホジキンリンパ腫の患者さんの約半数にEBVへの感染がみられます。
非ホジキンリンパ腫は、日本人の悪性リンパ腫の90%以上を占めるといわれています。大きくB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞腫瘍という病型に分類され、そこからさらに細分化されます。非ホジキンリンパ腫の発症リスクが高まる要因は多岐にわたります。
いわゆる免疫不全疾患にかかっている方や、免疫不全を引き起こすような治療薬を服用している方は、非ホジキンリンパ腫にかかりやすいといわれています。
いくつかの細菌やウイルスに感染すると、非ホジキンリンパ腫の発症リスクが高まることが分かっています。細菌感染では、ヘリコバクター・ピロリ菌への感染によって胃に発生する非ホジキンリンパ腫になりやすなります。またウイルス感染では、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)やヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)、C型肝炎ウイルスなどが非ホジキンリンパ腫の発症に関与しているといわれています。
一部の除草剤や害虫駆除剤、肥料などを扱う方に非ホジキンリンパ腫が発生しやすいと考えられています。
動物性たんぱく質や脂肪の摂取が、非ホジキンリンパ腫の発症に関わっていると考えられています。
すでに一部の非ホジキンリンパ腫では、原因となる染色体異常が検出されています。これらの異常が生じる原因はまだよく分かっていませんが、親から子どもに遺伝することはないと考えられています。
悪性リンパ腫になる原因はまだよく分かっていませんが、発症リスクを高める原因については少しずつ明らかになってきています。首や鼠径部、腋の下のしこりなど、気になる症状があれば医療機関の受診を検討しましょう。
また、悪性リンパ腫の中には自覚症状が現れにくい病型もあります。健康診断のX線検査や腹部エコー検査によって偶然発見されることも少なくないため、症状がない方も定期的な健康診断を受けましょう。