「貧血」は、非常によく聞かれる言葉です。健康診断などで指摘されたことがある方もいるかもしれません。そのなかで最も代表的な貧血は「鉄欠乏性貧血」です。これは、女性の10人に1人程度が該当すると言われるとても頻度の高い貧血です。鉄欠乏性貧血の症状・検査・診断について、横浜労災病院血液内科部長の平澤晃先生にお話をお聞きしました。
鉄欠乏性貧血の主な症状は以下の11点です。
これらの他には「異食症」と言われる症状があります。異食症は「氷をばりばりと食べたくなる」などが典型的な症状ですが、かつては「壁紙を食べたくなる」など、食物以外のものをも口の中に入れてしまうとも言われていました。
なお、眠気と貧血の関係についてはよく聞かれる質問のひとつですが、眠気は特異的な症状とは言えません。そして、よく貧血と失神が混同されますが、これらも全く別物の症状です。
主な検査項目で、鉄欠乏性貧血を診断するものは以下の5つです。
5つ目のフェリチンという項目は「貯蔵鉄」の指標になります。つまり、どれだけ予備の鉄が体内に蓄えられているかを示しています。
以下に参考とする正常値を示します。ちなみに正常値は施設により計測方法が違うため、大きく異なります。ですからあくまでも参考としてご覧ください。
赤血球数男性 400~539 (×10⁴/㎜³)
女性 360~489 (×10⁴/㎜³)
ヘモグロビン男性 13.0~16.6 g/dl
女性 11.4~14.6 g/dl
赤血球の大きさ(MCV)男性 80-100 fl
女性 80-100 fl
鉄 μg/dl男性 60-210
女性 40-170
フェリチン ng/ml男性 20-200
女性 10-90
繰り返しとなりますが、施設により計測方法が違うため正常値は大きく異なるうえ、人それぞれで安定している状態も違います。ですから、なかなかこの数値だけですべてを診断するのは難しいと言えます。
一般的にはヘモグロビン値が10を切ったら鉄剤を処方して飲み始めますが、必ずしもその基準(ヘモグロビン10以下で鉄剤を飲み始める)に当てはまらないケースもあります。つまり、治療を開始してからもヘモグロビンの数字に関しては、多少の数値の変動ならばあまり気にするほどのものではないということです。数値に関しては「一喜一憂しない」のが大切で、医師の指示に従いしっかりと鉄剤を飲み続けることが必要です。