糖尿病と診断された方が、受ける治療と、患者さんがすべきことについてお伝えしたいと思います。
糖尿病の治療には食事療法、運動療法、薬物療法など様々なものがあり、初診時の状態次第で治療も異なるため、注意が必要です。
糖尿病の治療は、糖尿病を理解することから始まります。糖尿病は初期段階では無症状であるため、なぜ治療が必要なのか理解しづらいのではないかと思います。
しかし、血糖値が高い状態が続くと危険な合併症を引き起こすので、最初から血糖コントロールをしっかり行うことが大切です。糖尿病によってリスクが高まるとされる心筋梗塞や脳梗塞などは、血圧コントロール、脂質コントロール、体重コントロールによってもその進展を抑えることが出来ます。
まずは今までの生活習慣を振り返りましょう。その中から主治医と一緒に改善するべき点をさがし、できることから少しずつ改善していくことが大切です。
例えば、夏であれば糖分がたっぷり入ったジュースやスポーツ飲料を過剰にとっている場合があるので、水に切り替えるよう指導します。これだけのことで血糖値が大きく改善する患者さんもいます。より身近で日常的な習慣であればあるほど実感しやすいと思います。最初の段階ではそういったものから改善していきましょう。
食事についても、担当のスタッフに聞いてみましょう。現在の食生活の問題点を把握した上で、食事はどんなメニューが良いのか、また食事で摂取する適切なエネルギー量についても指導を受けましょう。
運動不足や肥満がある場合には、運動を日常の中でより多く取り入れるようにします。例えば、通勤の際にいつもより1つ前の駅で降り歩く、ラジオ体操やストレッチを行うなど「いつでも、どこでも、ひとりでも」行える運動をとり入れます。ただし、糖尿病と診断されたからといっていきなり無理な運動をするのは危険なことがあり、注意が必要です。
初診が済んだら、糖尿病の合併症で発症する可能性が高いものがないか、必ず他科でも診察を受けましょう。合併症は、細小血管障害である網膜症、腎症および神経障害と、大血管障害である冠動脈疾患、脳血管障害および末梢動脈疾患に分類されます。
糖尿病と診断されるまでの間に何年も血糖値の高い状態が続いている場合があります。そのような方は初診の時点で眼に網膜症という病変が生じていることも多く、放っておくと失明することがあります。必ず眼科を受診し、眼底の評価をすることが必須です。
歯周病と糖尿病は密接な関係にあります。両方をきちんと評価し、コントロールすることにより双方に良い影響を与えます。糖尿病と診断されたら必ず歯科を受診しましょう。
糖尿病と診断された段階で血糖値が著しく高い場合、主治医から入院を勧められる場合があります。その期間で集中的に検査を行うことができますし、ご自分の生活を見つめ直すという意味でも入院という手段は有効です。家事や仕事から少しの期間解放され、自分の生活を意識し、それに伴う血糖値などの動きも把握することが出来れば、それが病気に対する理解が深めるきっかけになります。入院期間中に、退院後の生活のイメージしておきましょう。