ご家族に糖尿病の方がいらっしゃる場合、それは明確に糖尿病になる「リスク」といえます。そういう意味で、糖尿病は遺伝すると考えることができます。
持っていると糖尿病になりやすくなるという遺伝子が既に何種類か報告されています。しかし、それを持っていても発病しない人も多くいます。糖尿病は遺伝の因子に加え、環境因子も大切です。
糖尿病になりやすくなる遺伝子を持っている上に、食べ過ぎ、運動不足、肥満、加齢、ストレス、などの様々な環境因子が加わることにより、糖尿病が発病します。
意味合いは少し異なりますが「生活習慣も遺伝する?」という考え方があります。同じ環境で生活すると食生活の好みが親から子に伝わっていくということがよくあります。味が濃く脂っこい食べ物が食生活の好みを生活習慣の遺伝と考えることができそうです。また、家族が運動をあまりしない環境にいると運動をしなくなったり、家族が運動が好きだと運動をするにようになったりという環境的要因が伝わるということもあり得ます。
このような生活習慣の共有という観点からも、家族に糖尿病の人がいる場合は、毎年健診を受ける、太らないように努力をするなどの対策が大切です。ただ、それでも糖尿病の発病を免れられない場合もあります。
糖尿病のうち1型糖尿病の頻度は、日本人が欧米人に比べて明らかに低く、 10-数10分の1程度と言われています。
しかし、2型糖尿病では、患者の数は人口比にすると日本では欧米の1.5-2倍であると考えられています。 欧米人に比べると、日本人は摂取エネルギー量が少なく、肥満者も少ないにも関わらず、2型糖尿病が高頻度です。これは、日本人が2型糖尿病になりやすい体質を持っているためと考えられます。
日本人はこれまで穀物が中心の低脂肪かつ低カロリーの食事が中心でした。その結果、日本人の遺伝子には、過剰摂取されたカロリーを処理する仕組みが育っていないと考えられています。その状況に対し、飽食の時代を迎えて摂取エネルギー量や栄養素バランスの変化が加わりました。そのため、日本人で糖尿病が急増したのだと考えられます。
京都大学糖尿病・内分泌・栄養内科, 遺伝的体質と糖尿病, http://metab-kyoto-u.jp/to_patient/online/a006.html