糖尿病のために腎臓が悪くなった状態を糖尿病腎症といいます。糖尿病腎症は細小血管の障害であり、三大合併症のひとつです。
腎臓は血液をきれいにする臓器です。顕微鏡で見てみると毛細血管が糸の玉のように集まり、血液中の老廃物を尿に排出したり、体内環境の調節をしたりしています。そこに糖分の高い血液が流れてきてしまうと毛細血管が痛み、腎臓が障害されてしまいます。その結果、正常に老廃物を排出することができなくなったり、体内環境がおかしくなったりしてしまいます。
糖尿病腎症は尿たんぱく、尿中アルブミン、クレアチニンなどにより診断され、病期はその重症度により、1期から5期まで分類されます。2期程度の段階までであれば正常な状態に戻ることが出来ます。しかし、4期、5期となってしまうと正常な状態に戻ることは困難になります。
病期尿アルブミン値あるいは尿蛋白値GFR(eGFR)
第1期(腎症前期)正常アルブミン値(30未満)30以上
第2期(早期腎症期)微量アルブミン値(30~299)30以上
第3期(顕性腎症期)顕性アルブミン尿(300以上)あるいは持続性蛋白尿(0.5以上)30以上
第4期(腎不全期)問わない30未満
第5期(透析療法期)透析療法中
糖尿病性腎症病期分類。下に行くほど、病気が進行している=状態が悪いことを表します。
早期の腎症(2期〜初期の3期)であれば血糖と血圧のコントロールによって腎症が改善することもあります。したがって、早期発見がとても重要であり、それには定期的な尿アルブミン量の測定が大切です。
糖尿病腎症における治療は
の3つが基本となります。
糖尿病の基本療法である食事療法、運動療法、薬物療法を継続しながら、腎症の病期に合わせてこれらの治療を加えます。
糖尿病腎症は血液透析の原因第一位です。糖尿病が原因で年間1万3千人の方が血液透析療法の導入を受けています。血液透析療法は患者さん自身にとっても家族にとっても大変な負担や制約になる治療です。
末期の腎不全(腎臓がほとんど機能しなくなってしまう状態)に陥ってしまうと、透析療法が必要となります。透析装置の力を借りて老廃物の除去や体内環境を保たなければならなくなります。透析療法を始めると一生付き合っていかなくてはなりません。
透析には大きく分けて血液透析と腹膜透析があります。それぞれの特徴について見ておきましょう。