糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症の一つです。成人の失明原因の19%を占め、緑内障に続いて糖尿病は第2位です。年間約3千人が糖尿病のために視力を失ってしまっています。
網膜とは眼球の底(眼底)にあり、眼から入ってきた光を感知して視力を司る場所です。糖尿病によって高血糖が続くことで、網膜にはりめぐらされている細小血管がダメージを受けて、その血管が詰まったり破れたりすることが糖尿病網膜症の原因です。
糖尿病網膜症は、初期には自覚症状がなく、進行すると、以下のような症状が現れます。
さらに進行すると、失明に至るケースもあります。
網膜症は進行の程度により、単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症の三段階に分けられます。
このように、網膜症の怖いところはある程度進行しないと症状がでないというところです。気づかないでいきなり失明してしまうこともあります。従って、糖尿病の患者さんは定期的に眼科で眼底の検査をしてもらうことが必要となります。
眼底検査、蛍光眼底造影法などの検査で、上に述べたような眼底の所見を調べます。
網膜症は不可逆性であるため、それ以上進行させないことが治療の基本となります。それぞれの病期において適切な治療があります。
治療の基本は血糖コントロールですが、症状が進行すると次の2つの眼科的治療が行われることがあります。
レーザー光を網膜に照射することによって網膜症の増殖化の防止と沈静化を目的に行われます。新生血管の発生を予防するためにも、増殖前網膜症の段階で行うのが最も効果的であると言われています。
最も症状が進行した状態(増殖網膜症)において行われます。出血によってにごった硝子体とその原因となっている増殖膜を除去し、剥離した網膜の修復を行います。
次のような項目に当てはまるような患者さんは、網膜症の発症、及び進展のリスクがさらに高くなります。よりいっそう注意をし、定期検査を怠らないようにしましょう。