肺がんは日本で一番死亡数が多いがんとして知られています。実際に多くの方が命を落としている病気であることは間違いありませんが、早期のうちに発見できた場合の治療成績は必ずしも悪いものではありません。肺がん治療の最先端チームを率いる、東京医科大学呼吸器・甲状腺外科主任教授の池田徳彦先生にお話をうかがいました。
肺がんは顕微鏡で見た組織の特徴から、大きく4つの種類に分かれます。
腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんの3つは、小細胞がんとは別のカテゴリーとして、「非小細胞がん」と分類されます。これら非小細胞がんは肺がん全体の80%を占めています。
小細胞がんは、肺がん全体の15〜20%と発生する頻度は高くありません。進行が早く遠隔転移しやすいタイプのがんですが、抗がん剤による化学療法や放射線療法が効きやすいがんでもあります。
肺がんの発症リスクを高めるとされる要因には以下のものがあります。
肺がんの症状は、がんができる場所によって異なります。太い気管支にできた場合と肺の実質にがんができた場合のそれぞれに、次のような特徴があります。
太い気管支にがんができた場合
肺の実質にがんができた場合
国立研究開発法人国立がん研究センターのがん罹患数・死亡数予測では、2015年の肺がんの推計罹患数(肺がんにかかるであろう人の予測人数)は133,500人(男性90,700人、女性42,800人)、死亡数は77,200人(男性55,300人、女性21,900人)とされています。
肺がんは進行が早いがんであるとされていますが、早期に発見・治療できた場合の治療成績は非常に良好です。また、早期のうちであれば、身体の負担が少ない低侵襲な治療が可能です。このことからも、肺がん検診を受けて早期に発見することは非常に重要であるといえます。
40歳以上の人には自治体から肺がん検診の通知が届きます。肺がん検診は2種類の検査の組み合わせで行われます。ひとつは胸部X線検査、もうひとつは喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)です。
胸部X線検査は胸部単純X線撮影ともいい、肺の実質にできるがんを見つけるために行います。この検査で見つかるのは、主に腺がんです。
喀痰細胞診は、保存液の入った容器の中に朝起きたときに出る痰を3日分採取して顕微鏡で調べるものです。この検査では、気管や太い気管支にあるがんを見つけることができます。見つかる主ながんの種類としては、扁平上皮がんが大半を占めます。
喀痰細胞診はすべての人に対して行うわけではありません。喫煙指数(1日平均喫煙本数×喫煙年数)が600以上の方をハイリスク群として、喀痰細胞診を受けていただくようにしています。