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ファロー四徴症とは

ファロー四徴症は大動脈が左右の心室にまたがる「大動脈騎乗」という異常があることにより他の三徴(心室中隔欠損、肺動脈狭窄、右心室肥大)が随伴して正常な血液の流れが行われずにチアノーゼを引き起こす疾患です。心臓超音波検査やチアノーゼの出現により乳児期にほぼ診断がつくようになっています。詳しい症状について国立循環器病研究センター小児心臓外科部長の市川肇先生にお話を伺いました。

胎児期に心臓が作られる段階で異常が生じる「複雑先天性心疾患」の中で発症例が最も多いとされています。

「四徴症」の名前が示す通り、①本来左心室から出ている大動脈が右心室と左心室の両方にまたがって出ている状態(大動脈騎乗)②右心室と左心室の間の孔が開いている(心室中隔欠損)③右心室から血液を送り出す肺動脈が狭小化している(肺動脈狭窄)④右心室の壁が肥大化し、厚くなっている(右心室肥大)の4つの特徴を持っています。

これは4つが同時に起こるのではなく、「大動脈騎乗」に端を発するものです。大動脈が右心室と左心室の両方にまたがって騎乗(大動脈騎乗)することによって、結果的に、心室中隔がずれて孔が開き(心室中隔欠損)、肺動脈の入り口が狭くなり(肺動脈狭窄)、右心室が狭くなり圧が上がることによって右心室が肥大し、厚くなるのです(右心室肥大)。よって大動脈騎乗の度合いによって重症度が変わってきます。

「ファロー四徴症」は先天性の心疾患で、心臓の発生初期の異常によって生じます。環境因子や遺伝因子など多因子の関与が指摘されていますが、一つの原因では説明できません。多くは胎児期の心臓超音波検査による心雑音で見つかることが多く、そこで気づかれない場合には乳幼児期の心雑音あるいはチアノーゼの症状でわかります。

生後2カ月以後には、「チアノーゼ発作」が見られることがあります。はじめは寝た後などに見られることが多く、重くなると一日中起きるようになります。むずかりだした後、チアノーゼと呼吸困難が強くなり、ひどくなると意識を失ったり、全身のけいれんを起こすことがあります。通常はすぐに落ち着きますが、長時間続く場合は亡くなることもあります。

歩き始める頃になると、運動した後にしゃがみ込むような姿勢をとることが見られるようになります。これは座っているほうが立っている姿勢よりも心臓に戻ってくる血流が減少し症状が軽くなるためです。また、チアノーゼが出現してしばらく経つと手足の指先が丸く変形して、太鼓のバチのような形になります(太鼓バチ指)。

現在では乳児期にほとんど手術を済ませますが、未手術の場合はチアノーゼが強くなり、少し運動しただけで息が切れるようになります。また、チアノーゼがひどくなると酸素を取り込もうとして赤血球数が増加するため血液の粘度が増し,血栓症をきたすことがあります。また、左右の心房の間に穴があると、右心系よりも左心系の圧が高くなって、 血液は左心房から右心房へと流れる「左→右短絡」を生じ、このため脳膿瘍を合併することがあります。