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急性大動脈解離が疑われる症状 ~早急な治療が生存のカギ。突然胸や背中に激痛が起きたらすぐに救急車を~

心臓から全身に血液を運ぶ大きな血管を大動脈といい、大動脈は内側から内膜、中膜、外膜の3層で構成されています。このうちの内膜に、ある日突然亀裂が入り、その亀裂から血液が中膜に流れ込んで中膜が急激に裂け、大動脈内に2つの通り道ができてしまう状態が大動脈解離です。解離が起きてから2週間以内の時期を急性大動脈解離といいます。

急性大動脈解離の予後は悪いため、症状が現れたら速やかな受診が必要です。では、急性大動脈解離が起こるとどのような症状が現れるのでしょうか。

急性大動脈解離ではほとんどの場合、前兆なく突然胸や背中に激痛が起こります。胸や背中の激痛は大動脈が急激に裂ける結果として生じ、大動脈が数秒から数十秒で心臓側から足側に裂け続けるために、病状が進むにつれて痛む場所が胸から背中、腹部へと変化していきます。

大動脈から枝分かれする血管の血流が障害されることで、多様な症状が現れることもあります。たとえば、脳に流れる血管の血流障害が起きた場合には意識消失や麻痺、腸管への血流障害が起きた場合には腹痛や下血、手足への血流障害が起きた場合には手足の痛みやしびれ、冷感といった症状が見られるようになります。

解離が心臓側に進んだ場合、心筋梗塞(しんきんこうそく)や心不全症状(息切れや動悸など)が生じることもあります。また、“心タンポナーデ”という状態に陥ることもあります。

心タンポナーデとは

心臓は心膜という薄い膜で覆われており、この膜の内側のスペースを心嚢(しんのう)といいます。解離を起こした大動脈から血液が心嚢に流入して血液がたまると、心臓が抑え込まれてポンプとして機能できなくなり、血圧が急激に低下することでショック症状が起こります。この状態を心タンポナーデといい、命に関わるため速やかに処置を受ける必要があります。

大動脈解離は解離がある部位によってA型とB型に分類され、上行大動脈に解離があるものがA型、下行大動脈のみに解離があるものがB型です。特にA型の予後が悪く、発症から1時間あたり1%ずつ死亡率が上がるといわれています。つまり、およそ半数の人が48時間以内に死亡することになります。死因としては心タンポナーデがもっとも多く、全体の約7割を占めるとされています。

急性大動脈解離は一刻を争う大変危険な病気です。治療が遅れると死に至ることもあるため、何の前触れもなく突然胸や背中に激しい痛みが起きたら、すぐに救急車を呼んで病院を受診することが大切です。

また、少しでも早く診断して治療を開始するには、急性大動脈解離の可能性を疑うことが重要となるため、どのような症状があるのかを救急救命士や医師に細かく伝えるようにしましょう。本人から伝えるのが難しい場合には、ご家族など同伴者が知りえる情報を詳しく伝えましょう。

急性大動脈解離はほとんどの場合、突然の胸や背中の激痛で発症します。血流障害などによって意識消失、麻痺、腹痛、下血、手足の痛みや冷感、しびれ、心不全症状、ショックなど多様な症状が見られることもあります。A型の急性大動脈解離の場合、発症してから1時間あたり1%ずつ死亡率が上昇するため、早急に適切な病院に到着できるかで生存率が大きく変わってきます。そのため、症状が出たら様子見をせず、すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。