痔(肛門やその周辺の病気の総称)の中の1つである裂肛は、俗に“切れ痔”とも呼ばれています。これは肛門周辺の皮膚が切れた状態で、排便時や排便後に痛みがしばらく続くことがあります。また、痛みのほかに出血が見られる場合もあり、排便後拭いた紙に鮮血が付いたり、便に線状に少し付着したりする程度です。
裂肛では痛みを避けるために排便を我慢してしまうことで、さらに便が硬くなるという悪循環に陥ってしまうこともあるため、注意が必要です。では、何が原因で裂肛になってしまうのでしょうか。
主な原因は便秘です。便秘によって硬くなった便を出すために強くいきむことで、肛門周辺の皮膚が切れてしまいます。
ほかにも、便秘とは反対に下痢のように勢いよく出る便が原因になることもあります。
便秘で硬い便が出たときにできる浅い裂肛です。
裂肛が繰り返される中で慢性化し、深い潰瘍や見張りいぼ(細菌感染や炎症が肛門周囲に及ぶと肛門の外側にできる皮膚のたるみ)、肛門ポリープを生じる裂肛です。さらに繰り返すことで普通の便も出せない状態、肛門狭窄になることがあります。
そのほかに、痔核や肛門ポリープなどの繰り返す脱出により、肛門周囲の皮膚が引っぱられて生じる裂肛や、炎症性腸疾患などの症状が原因で現れる裂肛もあります。
裂肛の原因は多岐にわたりますが、前述の通り便秘や下痢などになりやすい人に発症しやすく、特に20~40代の女性に多いといわれています。
なぜなら女性は、月経前のホルモンの作用や妊娠などで便秘になったり、職場などで便意を我慢して便秘を生じやすかったりするためです。
裂肛を予防するには、裂肛になりやすい生活習慣を見直すことが重要です。そのため、原因である便秘や下痢を繰り返さないように食事に注意をしたり、排便習慣を改善したりすることが非常に大切です。
具体的には十分な水分や適度な食物繊維を摂取することが、スムーズな排便につながります。また、便意を催したら我慢せずトイレに行くように心がけましょう。それでもうまく排便ができないときには、軟便剤や整腸剤などを服用し排便をコントロールすることも大切です。
裂肛は原因に対する対策を行うことで予防することができるとされています。そのため、原因を正しく理解し、予防法を行うことを意識してみるとよいでしょう。
ただし、排便時の出血や痛みなどの症状は、実はがんやほかの病気である可能性もゼロではありません。そのため、気になる症状がある場合は医療機関を受診することも検討しましょう。診療科には肛門内科や肛門外科が挙げられますが、近くにない場合は外科や消化器外科でも問題ないです。放置せずに医師に相談するようにしましょう。