3歳くらいまでのお子さんに起こりやすい「急性中耳炎」。この治療ではどのようなことを行うのでしょうか。また、合併症にはどのようなものがあるのでしょうか。「急性中耳炎とは」に引き続き、国立成育医療研究センター総合診療部長の窪田満先生ご監修のもと、同センターレジデントの生駒尚子先生にご説明いただきました。
軽症の場合は経過観察ですむ場合もありますが、症状に応じて抗菌薬治療を行います。重症であり医師が必要と判断した場合は鼓膜を切開する場合もあります。
鼓膜切開とは、中耳に溜まった膿や液体を取り除くために鼓膜に数ミリ大の穴をあけることです。この処置は耳鼻咽喉科医が行います。耳に麻酔液を流し入れ、鼓膜に麻酔がかかったところで鼓膜にメスで穴をあけます。この穴から中耳に溜まった膿と液体成分を吸い出します。
鼓膜は薄い皮膚のようなものなので、炎症が落ち着けば自然と治り数日でふさがります。 ただ、ふさがるまでは耳に水が入らないように注意しましょう。
脳や脊髄神経を覆っている膜に炎症が起こるのが髄膜炎です。頭痛、意識障害、嘔吐といった症状が起こります。細菌性髄膜炎は、身体の中でも特に重要な脳に直接影響を及ぼす恐れのある怖い病気です。これらの症状がある場合は、すぐに入院が可能な医療機関を受診してください。
耳の後ろを触ると骨の出っ張りを触れます。「乳様突起」と呼ばれるこの骨の中は、ヘチマたわしのようなスポンジ構造になっています。そのスポンジ構造の中に細菌が入り込み炎症を起こすのが、急性乳突洞炎です。耳の後ろの腫れや発赤・痛みがみられ、場合によっては耳介が前方に押されて持ち上がった様になる場合もあります。難治性中耳炎や免疫抑制状態の患者さんでみられることがあります。
中耳の奥にある「内耳」という空間で炎症が起きることを内耳炎といいます。内耳には音を電気刺激として脳に伝える器官と平衡感覚を司る器官があるため、内耳炎が起こると、 めまいや難聴、耳鳴りなどの症状が現れます。
顔面神経とは顔の筋肉を動かす神経です。顔面神経は中耳や乳様突起の近くを通っています。中耳炎や乳突洞炎の炎症が顔面神経を巻き込んでしまうと、顔の筋肉がうまく動かなくなってしまいます。症状はゆっくり進行するため、数週間経過してから違和感が生じることがあります。
ただし、中耳炎に対する抗菌薬治療を適切に行えば基本的に合併症は起こりません。
ですから、「もう耳も痛がっていないし、お熱も下がったし、お薬飲ませるのをやめてしまおう」という自己判断は行わないでください。医師は、細菌を完全に除去するために必要な量と日数分のお薬を処方しています。幼いお子さんがお薬を飲みたがらずぐずってしまい、飲ませるのが億劫だと感じられることもあるかもしれません。しかし、保護者の方は処方されたとおりに飲ませることを必ず心がけてください。