「中耳炎」という病名はよく知られています。これは3歳くらいまでの子どもに多い病気です。中耳炎とはどのような病気で、なぜ子どもに起こりやすいのでしょうか。中耳炎のなかでも「急性中耳炎」について、国立成育医療研究センター総合診療部長の窪田満先生ご監修のもと、同センターレジデントの生駒尚子先生にご説明いただきました。
「中耳」の「炎症」のことを中耳炎といいます。中耳に細菌が侵入することで起こります。
これは3歳くらいまでの子どもに多い病気ですが、小学生にも認められます。風邪をひいて鼻水や痰がらみの咳に悩まされた1、2週間後に急性中耳炎にかかってしまう子どもが多いようです。「耳が痛い」と訴えたり、耳をしきりに触ったり、不機嫌が目立つようになったり、熱だけだったりと年齢に応じて訴えや症状は様々です。
中耳炎の起こる「中耳」とはどこのことでしょうか。下のイラストを参考にしてみてください。
耳の穴を奥へと進むと「鼓膜」にぶつかります。その向こう側が「中耳」です。鼓膜は薄くて透明な膜なので、鼓膜の様子を見て中耳に炎症が起きているか確認することができます。中耳炎の診断のために医師が耳をのぞくのはそのためです。
では、細菌はどこから中耳に侵入するのでしょう。答えは「鼻から」です。
細菌は、耳の穴から中耳へと入ることはできません。鼓膜に阻まれるからです。しかし、中耳と鼻は「耳管」という管でつながっています。そのため、鼻の中の細菌が耳管を伝って中耳に侵入し、炎症を起こしてしまうのです。
大人と比べて子どもの耳管は未熟で、角度や柔らかさも違います。そのため子どもの方が細菌の侵入を許しやすく、中耳炎を起こしやすいのです。成長するにつれ中耳炎にかかりにくくなるのはそのためです。
中耳に細菌が侵入して起こる中耳炎ですが、「小児中耳炎診療ガイドライン」では急性中耳炎について以下のように定義づけられています。
「急性に発症した中耳の感染症で、耳痛、発熱、耳漏を伴うことがある」
「以下の鼓膜所見を認めるとき:鼓膜の発赤、膨隆、光錐減弱、肥厚、水疱形成、混濁、穿孔・中耳腔の貯留液、耳漏・中耳粘膜浮腫」
自宅では鼓膜の状態を確認することはできませんので、鼻水・咳症状があった後に耳を痛がっている、熱が出る、耳から液体の流れ出しがあるかどうかを観察してみてください。
急性中耳炎は下のように分類されます。
「中耳炎の種類と症状」で記しましたが、中耳炎の診断には鼓膜所見が必要です。つまり、医師は耳の穴をのぞく必要があります。加えて問診も行います。子どもの生活背景(集団保育の有無や既往歴、予防接種歴など)を把握することは、治療計画を練るうえで大切なことです。また、鼓膜所見と症状から重症度も判定します。
その他、必要に応じて聴力検査を行う場合もあります。