ぶどう膜炎は、どんな病気かすぐに思い浮かべるのが難しい病気かもしれません。東京都立広尾病院眼科医長の宮永将先生にぶどう膜炎の特徴と症状についてうかがいます。
ぶどう膜炎は、もともとはその3つの組織に起きた炎症を指しています。しかし、そこに炎症が起きるとまわりの隣接した組織にも炎症が波及していくため、「目の中全体」で炎症が起こることになります。ですから今では、目の中の炎症を総じて「ぶどう膜炎」と呼んでいます。
年齢を重ねるとある程度発症頻度の上がる、緑内障や白内障などほかの目の疾患に比べると、ぶどう膜炎を発症する患者さんの数は少ないといえます。ぶどう膜炎の原因となる疾患は非常に特殊であることが多いため、ぶどう膜炎の発症頻度も必然的に少なくなるというとわかりやすいでしょう。
目の中は透明な組織で、角膜から前房、水晶体、硝子体を通って網膜で像が映っています。炎症は、虹彩、毛様体、脈絡膜の3つから発生しますが、前房や硝子体にまで及びやすく、炎症細胞の浸潤などが生じます。すると、透明な組織である前房や硝子体に濁りが生じたり、網膜などにも炎症が起こります。目の前のほうだけに炎症が起きる場合、後ろのほうだけに炎症が起きる場合、全体に起きる場合などいろいろなケースがあります。
前房や硝子体に炎症細胞が浸潤して濁ることによって視界がかすんだり、視力低下を引き起こします
炎症が強くなると痛みが生じたり、目の充血などを起こすこともあります。そのほか、光を見るとまぶしい、光が痛いと感じる方もいらっしゃいます。
原因によって症状の進行具合も変わるので一概にはいえませんが、急激に起こるものであれば症状も急速に進むため、「視力がどんどん悪くなっている」「ものすごく目が痛む」などご自身でも自覚できることがあります。反対に、じわじわと症状が進む場合、ご自身で「飛蚊症(黒い物が飛んで見えるような症状)が増えてきた」と感じて受診したところぶどう膜炎と診断されることもあります。
痛みは、「眼痛」であることが多いです。眼圧が上がると頭痛を引き起こすこともありますが、単純に「目が痛い」と感じることが多いでしょう。
これらの症状は、片目だけに現れる場合と両目に現れる場合、左右交互に現れる場合があります。また、一時的に症状があってもしばらくすればおさまってしまったり、時間が経過して再度症状が現れることもあります。
ぶどう膜炎の合併症として、白内障、緑内障、硝子体混濁、網膜前膜、嚢胞様黄斑浮腫などがありますが、これらは、水晶体、眼圧をコントロールする線維柱帯、硝子体や網膜などに炎症が波及することによって引き起こされます。ぶどう膜炎自体が合併症を起こすというよりも、炎症が隣り合う組織に影響しやすいため、ほかの疾患が誘発されてしまいやすいのです。