網膜剥離の症状を自覚した場合には、すぐに受診することが肝心です。網膜剥離かどうかを確かめるための検査として代表的なものは眼底検査です。このほかにも眼底検査を補う検査としていくつかの検査があります。それぞれの検査の目的と内容について網膜硝子体疾患のスペシャリストである滋賀医科大学眼科学講座教授の大路正人先生にお話をいただきました。
そのために行われるのが眼底検査です。眼底鏡という機械を使い、瞳孔から光を当てて網膜の様子を観察します。その際、網膜をすみずみまでチェックするために、瞳を拡大する目薬を投与します。これを散瞳(さんどう)といいます。目薬の効果は数時間続くので、検査が終わっても薬の効き目がなくなるまでの間は、まぶしかったりピントがぼやけたりするためしばらく車の運転はできません。
硝子体出血などで網膜の状態がよく見えないときは、Bモード法と呼ばれる、眼の断面図を超音波で撮影する方法で眼内の様子を観察し、網膜剥離の有無を調べることもあります。
また、網膜細胞がどの程度傷んでいるかを知るために、電極を埋めた特殊なコンタクトレンズを目の上に乗せ、強い光を目に当てて網膜から出る弱い電流を測定するERG検査もあります。超音波検査と同様に出血などにより眼底が観察できないときに行います。心電図のように電位変化を記録して、その波形から網膜の働きが正常かどうかを調べるものです。暗室のベッドで横になり、点眼麻酔をして、前述のコンタクトレンズを装着します。そして、眼球内の網膜に強いフラッシュを照射すると、網膜と角膜の間にある電位(静止電位)に変化が生じるので、このときの網膜の電位の変化をグラフにします。このグラフを細かく分析すると、網膜自体の機能がよくわかります。波が大きいほど網膜の働きはよいとされています。
これらを補足する検査として、見えない部分の範囲を調べる視野検査があります。現在では、コンピューターにより制御された自動視野計により視野異常を判定します。また、眼圧検査を行うこともあります。網膜剥離が起こると一般的に眼圧が下がることが多く、数値が極端に下がっている場合は網膜剥離を疑います。
また、光視症は必ずしも網膜剥離と結びつくわけではありませんが、やはり受診したほうがよいでしょう。視野欠損はだいたいが端の方から起こります。その後見えない範囲がどんどん真ん中に広がっていきます。ですから視野欠損に気づいたら早急に受診してください。特に中高年の方の場合、数日の間に急速に進行します。網膜の中心にある黄斑にまで剥離が現れた場合、手術をしても視力が戻らなかったり、線がゆがんで見えてしまうことがあります。当院の場合は、網膜剥離で視野欠損が認められた場合、当日もしくは翌日には手術を行っています。