日常生活でよく見えていても、気づかないうちに緑内障が発症している恐れがあります。緑内障は自覚症状に乏しいため、注意するべき病気です。今回は、緑内障の検査の重要性についてJCHO東京山手メディカルセンターの地場達也先生にお話を伺いました。
緑内障は自覚症状に乏しく、結膜炎やコンタクトレンズの検査などで眼科を受診していても、緑内障の検査を受けないと発見できない場合も多く、緑内障検診の重要性は計り知れないものがあります。
現況では、地域健診や職場健診に眼底検査は組み入れられていないことが多くあります。40歳を過ぎたら自覚症状がなくても眼科で総合的に検査を受けることが望ましいと思われます。
「眼」に特化した検査を行う「眼科ドック」を行っている施設も増えてきています。負担の少ない検査で緑内障をはじめとしたさまざまな目の病気を発見できるため、眼科ドックを受けるメリットは大きいと思われます。
施設により検査項目は異なり、緑内障・白内障・加齢黄斑変性・糖尿病網膜症・網膜裂孔・ドライアイなどの検査診断が行えます。
画像検査で網膜の断面像が撮影できる画像検査。緑内障で障害される網膜神経線維層の厚みも測定できる。
日本人の眼圧の平均値は14.5mmHgで、正常値は10~20mmHgとされています。単位は血圧と同じmmHg(ミリメートル水銀柱)で、平均眼圧はおおよそ収縮期血圧の約十分の一程度です。
眼球は、涙ではない房水という透明な液体により酸素や栄養が運ばれており、この液体により眼球の内圧は通常一定に保たれています。
眼圧検査は、目に空気をあてて測定する方法と、点眼麻酔後にゴールドマン圧平眼圧計というプリズムチップで測定する方法があります。
目のなかは暗いため、海底を見るように眼の底に瞳孔から光をあてて眼底を観察します。緑内障では、特に視神経乳頭やその周辺の網膜神経線維を観察します。
眼底検査は、通常散瞳薬を点眼して瞳孔を広げて行いますが、眼科ドックでは無散瞳カメラを使って検査する場合もあります。
視野が欠けていても自覚症状はないことがほとんどのため、視野検査は重要です。暗室で行う検査で、通常片目10分程度で終わります。
一般的な視野検査では、下図のように見えていない部分が黒く表示されます。実際にはその部分は黒く見えているわけでなく、霞がかかったようにぼやけて見えていることが明らかになってきています。
目のCTといわれ、近年普及してきた検査です。患者さんの負担は少なく、CTといっても放射線ではなく目に安全なレーザー光を用いることで網膜の断面像が撮影でき、緑内障で障害される網膜神経線維層の厚みを測定できます。
また、前視野緑内障といわれる視野が欠ける前の早期の段階で異常が検出できますが、緑内障の診断は、さまざまな検査を総合的に判断して行います。
房水(眼球の内部にある液体)の流れ口である隅角が閉塞していないか、点眼麻酔後に医療用コンタクトレンズを用いて行う検査です。特に、閉塞隅角緑内障の診断には必要不可欠な検査で、隅角の閉塞している範囲や程度を観察できます。
多くの緑内障は自覚症状が乏しいことと、内服と異なる点眼薬特有の煩わしさから、点眼治療の継続率はかなり低いといわれています。
2018年3月現在、唯一エビデンスのある治療方法は眼圧を下げる治療です。点眼治療の重要性を十分理解し、習慣化すること、正しく点眼することが重要です。「言うは易く行うは難し」ですが、治療は患者さん自身で行わなければならず、洗顔前や入浴前、食事時など一定時間の点眼を習慣にすることが望ましいと思われます。