緑内障は、日本人の中途失明原因の第1位です。とはいえ、早期に緑内障を発見して治療を始めることで、失明のリスクを低くすることができます。今回は緑内障の治療法について、JCHO東京山手メディカルセンターの地場達也先生にお話を伺いました。
2018年3月時点で緑内障と生活習慣との関連は少なく、唯一エビデンスのある治療法は「眼圧を下げる」ことです。そのため緑内障治療では、主に眼圧を下降させ視野障害の進行を遅らせる治療を行います。
「眼圧」とは、眼球の圧力(内圧)のことで10〜20mmHgが正常範囲です。日本人の平均眼圧は14.5mmHgです。眼圧は、時間、季節、体位などにより変動します。
緑内障治療を開始する場合、まず基礎眼圧を測定します。さらに、視野障害の程度、緑内障のタイプを診断しながら、眼圧を下げる点眼薬を開始していきます。生涯にわたる治療であるため、最初の数か月は検査のみで、点眼治療はすぐに開始しない場合もあります。
光干渉断層検査(OCT)の進歩により視野検査で異常がでる前の段階の「前視野緑内障」と呼ばれる極早期から診断評価が可能となりました。この場合、詳細な視野検査、眼圧、危険因子(緑内障家族歴、近視、年齢など)などを考慮しながら点眼治療を開始するか検討していきます。
点眼治療は緑内障治療の基本で、多くの種類の点眼薬があります。始めは1種類で治療を行い、効果が少ない場合は数種類の点眼薬を組み合わせて治療していきます。
点眼薬は飲み薬と異なり、うまく目に入らない、しみる、2種類以上の点眼薬を使う場合は5分以上間隔を空けなければならないなど、慣れない要素が多々あります。
実際に、緑内障は多くの場合自覚症状に乏しいため、患者さんが毎日点眼することは「言うは易く行うは難し」です。日本の研究データでも緑内障点眼の継続率は低いことが明らかになっています。
点眼が負担にならないように「気軽に気楽に継続すること」が重要だと思われます。
点眼治療で視野障害の改善をすることは難しいですが、進行を遅らせることができる唯一の治療です。繰り返しになりますが、点眼を継続することはとても大切です。
緑内障のレーザー治療は、主に閉塞隅角緑内障に対して行うレーザー虹彩切開術で房水*の流れを改善する方法です。詳細については記事1『眼の周りが痛い―その原因は急性緑内障かも』をご覧ください。
その他のレーザー治療に、目の水の流れ口である線維柱帯にレーザーを照射して房水の排出を促進する治療や、晩期緑内障で毛様体という部分にレーザーを照射して房水の産生を抑える治療もあります。
房水…目のなかを流れる液体。眼圧を一定に保つなどの役割がある。
緑内障手術は、白内障手術のように視機能を改善させる手術ではありません。点眼治療やレーザー治療で効果が少なかった場合に行います。緑内障の手術は、眼圧を下げて視機能を維持して失明を防ぐことが目的です。「緑内障手術により視野が広がる、見やすくなる」などの視機能の改善は残念ながら望めません。
手術方法は、眼圧や視野障害の程度を考慮しながら選択していきます。現在、多種の手術から選択することが可能となっています。手術のタイプを大きくわけると、詰まっている房水の流れを改善させる房水流出路再建手術と、眼外に房水の流れを導いて濾過胞を形成する濾過手術に分類されます。
近年、眼内からのアプローチで行う流出路再建術など手術方法が開発され、患者さんの手術からの回復が早くなり、心身の負担も少なくなっています。手術方法の改良により治療成績も向上しています。
しかし、手術を受ける際には、手術の合併症や再手術の可能性、また手術をしても視野障害が進行する場合や術後長期の管理が必要など、手術の効果や合併症などについて理解しておくことが望ましいと思われます。
緑内障を患っているといずれ失明するという不安を抱えている患者さんは少なくありません。しかし、近年の緑内障の診断技術や治療法は飛躍的な進歩をとげています。
確かに難治の緑内障であらゆる治療を施しても失明を避けられない場合や、発見が遅れ治療が追いつかない場合もあります。
しかし、早期に発見できれば治療の選択肢も多くあります。また、視野障害の中期や後期で発見されても生涯必要な緑内障の治療を正しくしっかり行うことで失明の危険性をより低くすることができます。