咽頭とは鼻の奥から食道までの範囲を指し、上から順に上咽頭、中咽頭、下咽頭に分類されます。このうち上咽頭にできるがんを上咽頭がんといい、日本国内では年間約800人が診断を受けているとされています。
がんは死に至ることもある病気ですが、治療の開始が早いほど治る可能性が高まるため、早期発見に努めることが何より大切です。では、上咽頭がんを発見する手がかりとなる症状にはどのようなものがあるのでしょうか。
上咽頭は鼻や耳、脳の近くに存在することから、上咽頭がんでは鼻や耳の症状、脳神経症状がみられる場合があります。
鼻の症状として鼻づまりや鼻血、耳の症状として難聴や耳閉感(耳がつまった感じ)などが挙げられ、このような症状は初期からみられます。ただし、初期には自覚症状がない場合も多くあります。また、上咽頭がんは首のリンパ節に転移しやすい性質を持ち、比較的早期から転移することが多く、転移すると首にしこりが生じるようになります。
脳神経症状は進行がんでみられ、がんが周囲に広がって脳神経が障害されることで視力の低下、複視(物が二重に見える)、顔面の感覚障害・痛み、嚥下障害(飲み込みづらい)、構音障害(言葉がおかしい)などの症状が出現します。
上咽頭がんは首のリンパ節に転移しやすい性質があります。また、初期症状として鼻や耳の症状が現れず、首のリンパ節転移によるしこりが現れることが多くあります。そのため、上咽頭がんに気づくきっかけとなる症状として、首のしこりがもっとも多いといわれています。
なお、上咽頭がんは進行度に応じてⅠ~Ⅳ期に分類され、Ⅳ期がもっとも進行している状態です。首にしこりがある場合にはⅡ期以上となります。
上咽頭がんの初期は無症状のことが多いですが、鼻や耳の症状が現れたり、首にしこりが生じたりすることがあります。発見が早いほど治る可能性が高くなるので、以下の症状が続いている場合には早めに耳鼻咽喉科の受診を検討しましょう。
病院を受診すると一般的にはまず問診、触診、視診が行われます。
問診ではどのような症状があるか、症状はいつから出ているかといったことが聞かれ、必要に応じて首の周りを触ってしこりがあるかを確認します。視診においては主に後鼻鏡または内視鏡を使用し、口または鼻から挿入して上咽頭に腫瘍があるかを観察します。
腫瘍が見つかった場合にはその腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で確認して良性なのか悪性なのかの鑑別が行われます(病理生検)。この病理検査でがんであるかが確定します。
検査には、ほかにもCTやMRIといった画像検査、超音波検査などがあります。このような検査によってがんの位置や大きさ、ほかの臓器への転移の有無などが分かります。
上咽頭がんに限らず、全てのがんにおいて進行するほど治る可能性が低くなってしまいます。上咽頭がんの初期は無症状であることが一般的ですが、鼻や耳の症状が現れたり、首にしこりが生じたりすることもあります。そのため、前述したセルフチェックのポイントを参考に気になる症状がみられたら自己判断で放置せず、早めに耳鼻咽喉科の受診を検討するとよいでしょう。