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副鼻腔炎の原因―増加する好酸球性副鼻腔炎

副鼻腔炎の原因の多くはウイルスや細菌によるものといわれていますが、最近は原因不明で難治性の好酸球性副鼻腔炎が増加傾向にあるといわれます。九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科講師の澤津橋基広先生に、副鼻腔炎の原因についてお話をうかがいました。

鼻の中の空洞を鼻腔といい、その周りを副鼻腔といいます。この鼻の奥の空洞に炎症がおきる病気が副鼻腔炎です。鼻汁や鼻づまり、咳や痰、頭痛や口臭といった症状のほか、頬の痛みや顔面の圧迫感、匂いに対して鈍くなる嗅覚低下などを伴います。副鼻腔炎は急性と慢性に分けられますが、症状が発現してから4週間以内の急性副鼻腔炎と、12週間以上続く慢性の副鼻腔炎とでは治療法も異なります。

副鼻腔炎は、風邪などによってウイルスや細菌が鼻腔に感染することで炎症を起こすとされています。また、カビが原因となる真菌性副鼻腔炎を起こしたり、ポリープが充満することで起きたり、歯が原因となり上顎洞に細菌が感染することで起こる歯性上顎炎というケースもあります。

かつては副鼻腔炎といえば、好中球によるもの(細菌感染)が主体だったのですが、2000年頃から治療に抵抗性を示す難治性の副鼻腔炎が増えてきました。手術によって摘出したポリープや副鼻腔の粘膜を組織学的に調べたところ、好酸球による浸潤がみられたことから「好酸球性副鼻腔炎」と命名されました。このタイプの副鼻腔炎については、好酸球の含有率などによって予後(病気や治療などの見通し)や再発率にも影響を及ぼすことが分かってきました。

好酸球性副鼻腔炎は、通常の副鼻腔炎と異なり、いわゆるアレルギー的な過敏症を呈するもので、大人になってから喘息を発症した人に多くみられます。痛み止めの服用によって喘息を発症するアスピリン喘息を合併することも少なくありません。特徴としては、成人での発症、両側性にポリープができる、粘り気のある鼻汁によって鼻づまりが起きる、嗅覚障害が起きるなどが挙げられます。原因は不明ですが、細菌性の副鼻腔炎が上顎洞に多く発生するのに対して、好酸球性副鼻腔炎は篩骨洞(しこつどう)を中心に起こります。また、都市部に多くみられるという傾向もあるようです。

この好酸球性副鼻腔炎においては、増加傾向にあるにも関わらず、その概念や診断基準が明確にされていなかったという背景がありました。そこで、ガイドラインの作成を目的に全国規模の疫学調査(JESREC Study : Japan Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis Study)が行われたのです。

そして昨年(2015年)、最新版のガイドラインに、初めて好酸球性副鼻腔炎に対する診断基準が掲載されました。

それによると、以下に示すような要件を点数化して診断されます。

  • 両側性副鼻腔炎 3点
  • 鼻ポリープを認める 2点
  • CT所見で上顎洞より篩骨洞の陰影が優位 2点
  • 血中好酸球2<5≦% 4点
  • 血中好酸球5<10≦% 8点
  • 血中好酸球10%< 10点

11点以上で好酸球性副鼻腔炎

病理組織診断で、70個以上の好酸球浸潤/1視野(400倍)で確定。