一般的にクラミジア・トラコマティスという細菌による感染症のことを「クラミジア感染症」(以降クラミジア)と呼んでいます。クラミジアは、現在では最も多い性感染症のひとつとなっており、性活動が盛んな10~20代に特に多く発症します。
クラミジアは感染しても無症状であることが多く、早期の発見が難しい感染症です。男性の場合は50%、女性の場合は80%もの方が無症状であり、疫学的調査によれば女性の患者さんは男性の2倍以上存在するともいわれています。
クラミジアに感染したときの症状については「クラミジアの症状」のなかで詳しく述べましたので、今回は実際にあったケースをみていきましょう。
年齢:30歳
性别:女
主訴:おりものの増加
検査の結果クラミジア陽性と判断され、クラミジア性子宮頸管炎と診断されました。クラミジアは男女ともに、感染のきっかけとなる性行為からおよそ1〜3週間の潜伏期間を経たのち症状が出現します。主に子宮頸管に感染し、子宮頸管炎を引き起こします。このクラミジア性子宮頸管炎の具体的な症状としては、この症例の女性のようにおりものの量がわずかに増えることがあります。この他にも下腹部に軽い痛みを感じたり、排尿時や性交時にわずかに痛みを感じたり、不正出血を認める場合もあります。
この方は自身でおりものの増加に気がつき受診しましたが、女性は一般的に男性の場合よりも自覚症状がないケースが多く、発見しにくい傾向にあります。
「クラミジアの症状-症状が出にくいため、感染に気がつかず重症化するケースも」の繰り返しになってしまいますが、もしも感染していることに気づかずに放置していると、感染の影響は子宮頸管炎から卵管炎に波及し、卵管狭窄を引き起こします。卵管狭窄は子宮外妊娠や不妊症などの原因になることもあるために、将来の妊娠や出産に影響が及ぶ場合もあります。またクラミジアの細菌が卵管から骨盤内に進入すると骨盤腹膜炎や肝周囲炎を引き起こすこともあるので、注意が必要です。
妊婦がクラミジアに感染していた場合、分娩時の赤ちゃんが産道を通る際に垂直感染を起こし、新生児がクラミジアに感染すると結膜炎、新生児肺炎を引き起こす原因となる場合もあります。
年齢:19歳
性别:女
咽頭所見:咽頭に自覚症状はないが、軽度の発赤、扁桃腫脹を認める。クラミジアは「淋病」「ヘルペス」「梅毒」などのほかの性感染症と同様に、咽頭(のど)にも感染し症状が出現します。性器クラミジア感染者の10〜30%は咽頭にも重複感染しているといわれ、診断・治療上、また感染源としても注意が必要です。
しかしクラミジアは咽頭に感染したとしても症状はほとんどなく、この症例の女性のようにのどが赤くなったり、のど奥の扁桃が腫れたりすることはほとんどありません。咽頭がクラミジアに感染して症状が進むと、菌が上咽頭から中耳まで進入して中耳炎を引き起こすこともあります。