ライム病とは、野生のマダニ類に刺され細菌(スピロヘータ)に感染することで引き起こされる感染症であり、日本では主に山間部に生息するシュルツェ・マダニに刺されることが原因とされています。
症状は皮膚症状や関節炎、髄膜炎、心筋炎など多岐にわたるため、ここではライム病の症状を中心に、検査や診断方法についても詳しく解説します。
ライム病の症状は多岐にわたり、感染してからの期間、細菌の拡散状況によっても異なります。症状は早期症状(ステージI、II期)、晩期症状(ステージIII期)に大きく分けられるため、ステージごとに症状を解説します。
マダニに刺されてから10日~2週間程度経ってから、刺された場所に赤い斑点や丘疹(腫れを伴う湿疹)が現れ、徐々に周辺に広がっていきます。発疹は環状紅斑(わっか状に広がった状態)や均一性紅斑(全体が赤くなった状態)であることが一般的です。周辺に拡大する紅斑は遊走性紅斑とも呼ばれます。
また、発熱や悪寒、頭痛、倦怠感、筋肉痛や関節痛など、インフルエンザのような症状が現れることもあり、こういった症状が4週間程度続くとされています。
ステージI期の状態で治療を受けなかった場合、感染した細菌が体内循環によって全身に拡散する播種期(ステージII期)に移行することがあります。
この時期になると発疹がさまざまな場所で多発するほか、髄膜炎(頭蓋骨と脳の間の髄膜が炎症することで頭痛や発熱が現れる)や神経根炎(神経の基部が圧迫されて腕や手に痛みやしびれが現れる)、顔面神経麻痺といった神経症状、不整脈(心拍リズムの異常)や心膜炎(心臓の膜に炎症が起きて発熱や胸の痛みが現れる)といった心疾患、関節炎、筋炎、眼の症状など、多岐にわたる症状が現れることがあります。
感染から数か月~数年経過すると、感染後期(ステージIII期)に移行することがあります。この時期には播種期の症状に加え、慢性萎縮性肢端皮膚炎(四肢の外側の皮膚がひだ状になる)といった皮膚症状や慢性髄膜炎、慢性脳脊髄炎(脳と脊髄の慢性的な炎症)、大関節の腫れや痛みを伴う慢性関節炎などが引き起こされることがあります。
また、悪化すると死亡したり、治ったとしても数年にわたって皮膚や関節の後遺症が残ったりする場合があるため、早期での治療が重要です。ただし、日本では感染後期に移行した症例は確認されていません。
ライム病の診断は、問診や検査結果などによって医師が総合的に判断します。問診における重要な判断基準は、山に入るなどマダニとの接触機会があったかどうかです。日本におけるライム病の大きな原因であるシュルツェ・マダニは、北海道、本州、四国、九州の山間部のほか、北海道や青森県の平野部(市街地を除く)にも生息するとされています。
また、皮膚症状をはじめとする前述のような症状があるかどうかや、血清診断の結果も重要です。血清診断とは、血液を分離し血清を検体として抗体の有無を調べる検査方法です。ライム病の場合は、感染場所が海外なのか国外なのかにもよって病原体が異なるため、推定される感染場所によって適した血清診断用抗原を選択し、血清診断を行います。
そのほか、発疹がある部位の皮膚を採取し顕微鏡で見ることで、病原体の検出を行うことが可能なこともあります。
ライム病はマダニ類に刺され、スピロヘータという細菌に感染することで引き起こされる感染症です。代表的な感染初期の症状は、マダニに刺されてから10日~2週間程度経ってから刺された場所に現れる赤い斑点や丘疹で、徐々に周囲に広がっていくことがあります。
そのほか、発熱や悪寒、倦怠感など、インフルエンザのような症状が現れることもあるため、山間部などに行った後にこのような症状が現れた場合は、皮膚科や内科、総合診療科などの受診を検討するとよいでしょう。また、マダニは自分で無理に取らず、医療機関で取ってもらうようにしましょう。